弱虫ペダル | ナノ


  貰われていったお菓子


お菓子作りが好きだ。



『今日は調理実習〜』

「なんや、寺崎さんごっつ嬉しそうやん」

『鳴子くんおはよう!』

「おはようさん。なんでそんなに嬉しそうなん?」

『調理実習だからかな?』

「あ!せやったっけ!?
なーんて、忘れてへんけどな!カッカッカ」

『忘れてたら私の班から放り出すとこだったよ』

「なんやてー!!?」

『まぁ同じ班って言っても簡単なものだからひとりひとり作るらしいけど』

「はーん」

『鳴子くんにはあげないよ』

「わかっとるっちゅーねん」


調理実習と聞いたら、どういう風に思うだろう。私みたいに調理実習が嬉しい人、はたまたあまり嬉しくない人、いろいろな意見があると思う。


総北に入って、料理部に入部して、料理や、お菓子作りの楽しさを学んだ。
大好きなことを出来るって最高だと思う。


***


昼休み。
家庭科室に鳴子くんと向かう途中、3年の先輩に会った。
多分この2人は鳴子くんの部活の先輩だ。


「よ、鳴子」

「……」「手嶋さん、青八木さんもどないしたんですか?」

「今日、調理実習だって噂を聞いてな。たかりに来たんだ」

「んなー!どっから情報入手したんすかー」


鳴子くんがたかられている……。
それにしても、私一緒にいたら邪魔な気がする(というか、自転車部に囲まれてるだけで他の女の子から何か言われそう。よし、逃げるか)


『鳴子くん、私先行ってるね』

「おお、すまんな」

『ううん、大丈夫』


そんなわけで、私は脱出に成功したので、この後の会話は知らない。






「寺崎さんは、作ったお菓子は誰かにあげるんか?」

『早かったね、鳴子くん』


先生の手伝いで材料や道具を出していると、思ったより早く鳴子くんはやってきた。


「いやー、ほんま驚いたわ。あの二人神出鬼没すぎやろ」

『でも仲良いでしょ?良かったね!いい先輩で』

「おおきに!……で、誰かにあげるん?」

『…………んー、自分用??』

「自分で食べるんかいな」

『そんな私が他の女の子みたいに○○くんにあげるの〜!とか言ってたら嫌だ』

「せやな……」


そんな談笑を交わしているうちに授業時間になり、わーわー騒ぐ鳴子くんをフォローしつつ、他の女の子達のラッピングを手伝いつつ、自分のものを完成させつつ、目まぐるしく時間は過ぎていった。



それにしても、なんで鳴子くんは誰にあげるのか聞いてきたんだろ。いつも聞いてこないのにな〜



***



『先生、片付け終わりました』

「ありがとう」

「先生、ワイには言ってくれへんのですか?」

「鳴子はニコニコしながら立ってただけだろ」

「ひどいっすわー、あんまりっすわ先生〜」


先生と鳴子くんがコントを繰り広げていると、ガラガラ、と音がした。
振り向くと、さっき鳴子くんと話をしていた先輩達だった。


『なんか先輩来てるよ、鳴子くん』

「!!!お、おう、さよか」

『?私戻るよ?』

「い、いや、居っといてほしいねん!」

『どうしたのそんな挙動不審で』

「なんでもないわ!武者震いや!」

『はぁ』


先輩達が現れた瞬間に挙動不審になる鳴子くんに、クエスチョンが浮かぶけど、いてほしいというなら大人しくいよう。


「よ!鳴子」

「お菓子……」

「パーマ先輩も無口先輩もがっつきすぎや!」

「悪ぃ悪ぃ」

「純太が行こうって言ったんだ、だから来た」

「青八木!?」

「そんな焦らんくても部活の時でもええやないですか」

「いやー、そりゃ、な?」

「……(コクッ)」

「はぁあ……」

『???』


なんで私この場でコントを眺めてるんだろ。先生も気づけばいないし。


「寺崎さん、頼みがあんねん」


首を傾げていると、突然鳴子くんが真剣な表情でお願いがあると言ってきた。


「ここに居る人、ワイの先輩やねん。パーマなんが手嶋さん、無口なんが青八木さん言うねん」

『うん。……えと、はじめまして、鳴子くんと同じクラスの寺崎湊です』

「!?そこは友達って言うてーな!
まぁええわ……ほんでな、」

「湊ちゃんの作ったお菓子、くれないか?」

「!手嶋さん」

『(今ナチュラルに下の名前で呼ばれた)』


みんなして真剣な表情でお願いしてくる(ひとりなんかチャラかったけど)
私のお菓子、一体いつからそんなに価値があるものになったんだ??


「頼むよ」

「ワイからも頼む」

『そんなに必死に言われなくても、誰かに食べてもらえる方が嬉しいからどうぞ…』


正直嬉しい。嬉しいけど不思議だ。


「ありがとう、湊ちゃん」

「ありがとう。
……純太(ちょっと馴れ馴れしいぞ)」

「わかったよ、青八木。
今度オレもお菓子持ってくるから、そしたら湊ちゃんに渡すよ!」

『え、あ、ありがとうございます?』

「ワイにはなんもないんスか!」

「鳴子もサンキューな」

「ほんま策士やわ!あの人!」





こうして、私のお菓子は貰われていった。









↓おまけ↓

『鳴子くんの先輩……チャラかった』
「ホンマすまん(……なにしとるんですか、手嶋さん!)」
『お菓子もらってくれるのは嬉しいんだけどね』
「ワイにはあげへんとか言うとったのに」
『鳴子くんにはなんだかんだあげてるじゃん』
「せやって寺崎さんのお菓子上手いねん」
『おおう、ありがとう』


↓こうなるに至った経緯↓
(鳴子、そのお菓子どうしたんだ?)
(友達がくれたんスわ)
(へー……)
(ホンマ寺崎さんのお菓子は最高やわ!あ、食べます?)
(おう、サンキュー。……(うま!))
(!)

((なぁ、青八木。寺崎さんて、料理部の子で鳴子といつも一緒にいる子だったよな))
((コクッ))
((小野田達が今度調理実習らしい。鳴子のクラスも近々あるだろう。小野田達なら鳴子のクラスの実習日程もわかるだろうし、もらいにいこう))
((ああ!純太))


↓夢主が家庭科室に向かったあとの会話↓
(寺崎さんのお菓子、もらえるように頼んでほしいんだ)
(かー!そんなことだろうと思ってました!)
(はは、ついでに鳴子のももらってやるよ)
(腹立ちますわ二人して。ええわ、見とってください)
(頼んだぜ)





↓そしてその後↓

(湊ちゃん、ほら。この前言ってたヤツ)
(あ、あれ本当だったんですか……
ありがとうございます。頂きます)
((素直だな))
((うわ、なにこれ……手嶋先輩のお菓子美味しすぎない!?))
(どうだ?うまいかー?)
((コクコク!コクコク))
(ははっ!そりゃ良かった)

(あ!手嶋さん何してはるんですか!!)
(おっと。じゃーな!湊ちゃん)



そしてお互いに餌付けされていく(?)のはまた別の話。








+++++++++++
鳴子くん贔屓の純太夢(?)
純太の作ったお菓子が食べたい!って話から勢いで書きました。
なんだろう。夢主を守る忠犬と忠犬から夢主を奪おうとする狼みたいな←

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