弱虫ペダル | ナノ


  やきもち


『純太って女の子大好きだよね』
「んぉ?」
『ばーかばーか』
「いきなりなんだよ」
『なんでもないでーす!あ!小野田くんだ!おはよー!』
「ひええ!?あ、湊さん、お、おはようございます!」


オレには、好きなヤツがいる。
それは、ついさっきオレに対して暴言を放ち、小野田を見つけて突撃していった幼なじみの寺崎湊だ。



「なんだったんだ、さっきのは」
「純太、おはよう」
「おお、青八木。おはよう」
「…………。湊ちゃんをちゃんと見てないと、後悔するぞ」
「お、おう?」
「…………」


正直、人付き合いは苦手だ。
オレの気持ちも、本音も……ちゃんと理解しているのなんて、青八木くらいだろう。

笑っていれば、周りも笑う。そのくらいでちょうどいいと、思っていた。

それをきっと、湊は知らない。知ったら幻滅するんじゃないかと思って、いつだっていい顔をしていたんだ。



***


「手嶋ーおはよぉ」
「おす」
「ねね、今日カラオケ行こうよ〜またメドレー聞きたい」
「わりぃ、今忙しいんだわ」
「えー」


クラスに行くと、女子が話し掛けてくる。それも茶飯事だ。
主将になってからは特に、女子が話し掛けてくるようになった。


隠れてため息をつく。
ふと、廊下を見ると青八木と湊が談笑しながら歩いているようだった。


(なんだよ……)


胸がザワザワする。湊の隣にいていいのはオレだと、心が叫んでいるようだ。


青八木がオレの方に視線を向ける。
青八木の瞳が、「がんばれ」と言っているように見えるのはオレの気のせいか。


ガタッと席を立ち、青八木と湊の元へ向かった。


「青八木!湊!」
『わ!び、びっくりした……純太か……』
「…………」
「二人が一緒にいるなんて珍しいな!」


ああ、まただ。またオレはなんてことないように笑ってしまった。
黒いものが渦巻いているのに。


『たまたま階段で青八木くんに会ったんだ。ね』
「(コクッ)」
『……青八木くん、純太に用事があるんだっけ?私このまま教室帰るし、付き合ってくれてありがとうね』
「純太!オレは用事を思い出したから一回教室に帰る。湊ちゃん、純太の話相手をしてやってくれ」
『???え、あ、はい』
「またあとで来る」


湊が帰ろうとすると、それを阻止するかのように、青八木が声を出した。
それに圧倒されたのか、湊は青八木が去ったあとも、この場から離れない。

(青八木のヤツ……)


さっきまで黒いものが渦巻いていた心は、暖かいもので包まれているようだ。


『びっくりした……
青八木くんが純太に用があるっていうから途中まで一緒に行こうかってなったのに……』
「きっと大事な書類を忘れたんじゃねーかな」
『しっかりしてそうなのに?』
「いや、結構抜けてるぜ」
『純太ほどじゃないでしょ』


(サンキュー、青八木)


せっかく青八木がきっかけを作ってくれたんだ。無駄にはしねーよ。



「湊、今朝なんでオレにバカって言ったんだよ」
『…。女の子』
「は?」
『純太のクラスの、さっき話してた女の子と、カラオケ行ったでしょ』
「あぁ、けど大人数だぜ?」
『…………けどあの子は、多分純太のこと好きだから。もし、さっき断ってなかったら絶交してやろうと思ってた』
「マジか……(あっぶねえ……グッジョブ、オレ)」


湊は心なしか拗ねているようだ。
淡々と話すから、絶交云々は本気だったんだろう。


「絶交されたら湊と話せねーじゃん」
『絶交だからね』
「……オレも、さっき青八木と一緒に湊がいるのを見て嫉妬した」
『えっ……純太が?』
「オレ以外誰がいるんだよ……
湊の隣はオレの場所だって思ったよ」
『へ』


けど、思ったよりすらすら出てくる本音に、湊の頬はどんどん赤くなっていっている。




オレは意気地なしだ。こうやって確証がないと踏み切れない。

なぁ湊。
今朝の言葉は、やきもちだって思っていいのか?


『どうしたの純太、普段そんなこと言わないのに』
「オレらしくないか?」
『んー……どんな純太でも、純太は純太じゃない?私は好きだけどな』


へへ、と照れたように笑いながらかわいいことを言う幼なじみに、今朝の青八木の言葉が過る。


"湊ちゃんをちゃんと見ていないと後悔するぞ"


本当だな、青八木。
いつだってお前は、意気地なしなオレを力強い瞳で……背中を押してくれるんだ。




「オレも湊が好きだよ」
『〜〜っ』


飛び付いてきた湊を受け止めると、視界の端に青八木がいた。
グッと親指を立てる青八木に、オレは同じように親指を立てて、そして笑った。








↓青八木くんと湊の会話↓
(……湊ちゃん)
(あれ、青八木くん。どうしたの?)
(これから純太のところに行くんだ)
(……私も通る場所だし、途中まで一緒に行く?)
(コクッ)

(手嶋〜おはよぉ)

((なにをやっているんだ、純太……))
(……あの子……この前純太とカラオケ行った子だ)
(……。湊ちゃんは、純太が好きなんだな)
(!!!!青八木くん良く見てるね)
(……純太……断ったな)
(……うん、良かった)
((純太……がんばれ……いけるぞ……!))

(青八木!湊!!)
((純太のためにも、オレの心労のためにもここはオレがフォローしないと……よし、オレは一回立ち去ればいいな……!))







++++++
こんな感じで青八木くんがキューピットになれば(私が)とてもおいしい。
sideを夢主じゃなくて相手にするとなかなかうまく書けないんだよね……難しいいいい



prev / next

[ back ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -