隣の席の手嶋くん
私の隣席には、自転車競技部の主将になった手嶋純太くんがいる。
「おす、寺崎」
『おはよう、手嶋くん』
特徴その1。彼はよく笑う人だ。必ず目を見て、笑って挨拶をする。
「手嶋〜、ノート見せて」
「ダメだ」
「そんなこと言わずにさ〜」
「お前……いつもじゃねーか」
「これで最後にするから、なっ!頼む」
「しょうがねーな、次は貸さねーよ」
特徴その2。人望が厚い。
たまに悪い顔をしてニヤッて笑うけど、それもまた彼の人柄を表してるのだろう。
けどひとつわからない。
「青八木!ティータイムにしようぜ!」
「純太」
「安心しろ!ちゃんとお菓子は持ってきてるぜ」
ひとつ……いや、ふたつかな。
まず手嶋くんはなぜ青八木くんの言葉がわかるんだ。
そして何がティータイムなんだ。紅茶、好きなのかな?
(手嶋純太くんは不思議な人だ。)
***
翌日。せっかくなので、聞いてみることにした。
「おー、おはよ寺崎。どうした?そんなにオレをガン見して」
『…………手嶋くんて、紅茶好きなの?』
「……そうだな、好きだぜ」
『じゃあこれ!』
「お、おう?」
しまった。勢いあまりすぎた。
あんまり男の子と話さないから。
「まだ寒いから、主将さんが風邪引いたら示しつかないだろうし!
紅茶とはちょっと違うかもだけど!チャイティー!良かったら……!」
私の支離滅裂な言葉もしっかり耳を傾けて聞いてくれる。彼は優しい人なんだろう。
「ありがとな」
『いや……!あの!私こそ突然……えと、もらってくれてありがとう!』
私の言葉に、彼はニカッと笑った。
きっと、彼は短い言葉で、気持ちを理解できる人なんだ。青八木くんの言葉が理解できる理由が、少しわかった気がした。
自転車競技部は、去年優勝した。
隣の席の彼は、その部活の主将になった。
その重責はきっと、計り知れないものだろう。
(今年の夏は、IH観に行ってみようかな)
そしたら彼は、今日と同じように笑ってくれるんだろうか。
(青八木!寺崎から紅茶もらった!)
(良かったな、純太)
(今度はこの紅茶でティータイムにするか。寺崎も誘って)
(そうだな)
二人の距離が近づくのは、もう少しだけ先の話。
++++
勢いあまりすぎたのは私です←←
閃きでバーっと書いてしまった。
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