3

群衆との距離はもう三十メートル程に縮まっていた。芭蕉は矢を手に取ると自然な動作で弓につがえた。


ゆっくりと弓を引き絞り、狙いを定める。



放たれる矢。



それが前方に立ちはだかる一体の鬼の額に命中した瞬間。



「行きますよ!」



いつの間にか両手にグローブを嵌めた曽良が、グローブから十本の鋼糸を飛ばした。



鋼糸は網のように広がり、何十体もの鬼の四肢に巻きつく。


『グォォォォォ!!』


ビリビリと振動が伝わる鬼達の雄叫び。なんとか抜け出そうとする鬼達を一瞥すると、曽良はグッと鋼糸を引いた。


「【紅吹雪】」


『グァァァァァ!!』


茜色の空を彩るように舞い散る鮮血。


響き渡る断末魔に曽良は僅かに顔を顰めると、肉塊となった鬼達から視線を外した。


「芭蕉さん」

「なに?曽良君」


視界を埋め尽くす鬼達にも動じず、芭蕉は弓を引き絞る。


回収した鋼糸を先ほどよりさらに広範囲に展開させて、曽良は言う。



「三分以内に終わらなかったら断罪ですよ」


二人はそれぞれの武器を構えて鬼達に立ち向かう。

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