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芭蕉がようやく泣くのを止めた時、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。


「ですから〜、お願いしますよ阿部さん!陰陽師なんでしょう?」

「怖いのムリ!なんでそんなおばけがいるところに行かにゃならんのだ!」

「陰陽師はそういうのを退治するのが仕事じゃないんですか!?」


足音が近づいてくるに連れて、話し声もはっきりと聞こえてくる。
陰陽師?と芭蕉が首を傾げた時、部屋の襖がガラリと開いて、見知らぬ男が姿を見せた。

男は部屋の中にいた四人を一瞥すると、後を追って来た若い男に顔を向けた。


「間違えた」

「なんで間違えたの!?阿部さんの部屋もっと奥でしたよね!?」

「君が幽霊なんていうからだぞ!ちょっとちびりそうになったじゃないか」

「ちびりそうになったの!?こんないい年して!?子供かあんた!」

「おばけムリ!」

「誇らしげに言うな!なんで町長はこんな人雇っちゃったんだ…」


額を抑えて項垂れる若い男に妹子は自分と共通する何かを感じた。


「あの…」

「あ、すいません。今出ますんで。ほら、阿部さん行きますよ!」

「彼らに頼めばいいだろうが!なんで俺……」

「あなたが陰陽師だからです!早く湯鐘旅館に行きますよ!」


湯鐘旅館。聞き覚えのあるワードに妹子達は顔を見合わせた。

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