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夕方になり、次の町に辿り着いた四人は町の中を散策していた。
「大きな町ですねぇ」
「そうだねー。あっ!曽良君曽良君。あそこに屋台があるよ、屋台」
「ダメですよ芭蕉さん。あなたは昨日も茶屋に行ったでしょう」
「私もそろそろいい感じの武器が欲しいなぁ。なんかこう……曽良が持ってる感じの」
「鋼糸は素人が使えば自分の身体をバラバラにして終わりますよ」
「ご飯前にそういう話はやめましょうよ……」
とりあえず今日の宿を探そうと、近くを通った町人に声をかける。
「すみません。旅の者なのですが、どこか良い宿をご存知ですか?」
「さぁ……宿の主人とはあまり縁がないからねぇ。あぁ、でも[湯鐘旅館]には行かないほうがいいよ。あそこは幽霊が出るからねぇ」
「幽霊?」
「あぁ、なんでも人形を抱えた女の子の霊が出るとか……。もういいかい?」
「あ、はい。ありがとうございました」
「いやいや。ゆっくり旅の疲れをとっておくれよ」
去って行った町人に礼をすると、妹子は話を聞いていた三人に向き直った。
「……幽霊?」
「本当に出るのか?っていうか足痛い。しゃがむ」
「もっ、もしかして曽良君、また……!?」
「なぜそんな顔でこちらを見るんですか芭蕉さん」
一瞬で顔を青ざめさせる芭蕉に曽良は訝しげな視線を向ける。
「まぁ、行くなと言われて行く人はいませんし、別の旅館を探しましょう。太子、立って下さい」
足が痛いを連呼する太子を腕を引っ張って立たせる妹子。
「幽霊気になるんだけどな〜」
「曽良君…また憑かれてるんじゃ……」
「疲れてるに決まってるでしょう。芭蕉さんだってつかれてるんじゃないですか?」
「わ、私は憑かれてないぞ!そんなわけない!」
「……元気が有り余っているのか知りませんがあまり叫ばないで下さい。うるさいです」
「生気吸い取られてるんだよ!やばいよそれ!今すぐお祓いに「やかましい!」グボァ!私は曽良君を心配しただけなのに……」
宿を探すにも一苦労。こんなのでこの先やっていけるのかと妹子は少し心配になった。
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