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「まずは何から聞きたいですか?」
前を歩く芭蕉の背を眺めながら、曽良が問いかける。
「なんで二人は戦ってるんだ?あの様子じゃ鬼を見たことがあるんだよな?」
それに殺したことも、と顔を伏せて小さく付け加える太子。曽良は芭蕉の後ろから妹子の横へと移動すると、静かな声で語り出した。
「半年前、僕達が旅の途中で出会ったかさねちゃんという女の子が鬼に攫われたんです。僕達はそれを彼女のお姉さんから聞きました。
彼女の家には色々お世話になりましたし、何より鬼に攫われたとなれば誰だって心配するでしょう?
だから僕達はかさねちゃんを取り戻すために、鬼達と戦うことにしたんです」
二人が戦うことになった経緯を知った太子達は顔を見合わせた。
半年前。
それは二人が追っているフィッシュ竹中が失踪した時期と合致している。これは偶然なのだろうか?
「妹子君?太子君?どうしたの?」
「え?あ、いや……実は僕達が追っている人も同じ時期に突然失踪しているんです」
妹子は簡単に経緯を説明した。話を聞いた芭蕉は「うーん」と唸り、曽良を見た。
「どう思う?曽良君」
「普通に考えれば、フィッシュ竹中さんも鬼達に攫われたと考えるのが妥当でしょうね」
「ですよね……。でも、鬼達はどうして二人を攫ったんでしょうか?」
妹子の言葉に、全員が首を捻った。どうやら検討もつかないらしい。
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