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「詠めばいいじゃないですか」
「ルールがわかんないんだよ。曽良、ルール教えて」
ぶりっこのようにくねくねと身体をくねらせる太子をスルーして、曽良は簡潔に説明する。
「五・七・五の形と、季語が入れば良いですよ」
「さっき芭蕉さんが詠んだ俳句は季語が入ってなかったぞ?あと五・七・五でもなかったし」
「あれは無季自由律という形ですが、内容が小学生かそれ以下だったので俳句とは呼べません」
「なんで芭蕉さんはそれを詠んだの!?」
「弟子の評価が予想以上に辛辣!?くそぅ曽良君!好き勝手言いやがって!曽良君の辛男!」
曽良の言葉に芭蕉が足をバタバタと暴れさせる。妹子が何かフォローの言葉をかけようとした時、太子が嬉しそうな声を上げた。
「よーっし出来たぞ!」
「はやっ!じゃあさっそく聞かせてください太子」
「ふふーん、聞いて驚くなよ妹子」
そう言うと、太子は自信ありげに句を詠み上げた。
【夏の日に ぶち当てたいな 妹子顔】
「ぶち当てんな!ってか妹子顏ってなんだよ!?どんな顔だよ!?」
「こんな顏」
「捻り上げるぞお前!!」
かつて妹子に殺意を芽生えさせた顔をする太子に妹子のツッコミが最高潮に達する。
「どっちもどっちですね。五・七・五に収まっていた分、芭蕉さんよりはマシだったんじゃないですか?」
「弟子が心身共にダメージを蓄積させてくる……」
「そろそろ上がりましょうか。のぼせてきました」
顔を真っ赤にさせている曽良を見て、芭蕉は自分の頬に手を当てる。
「そうだね。私もそろそろ暑くなってきちゃった」
「あれ、もう上がるの?二人とも」
二人が立ち上がったのに気づいた妹子が声をかける。
「ええ。のぼせてきたので」
「そっか。また会えるといいね!」
「そうですね、また会いたいです」
「またな二人とも〜」
「またね太子君、妹子君」
大浴場から出て行く二人を見送る妹子と太子。太子はぶくぶくと潜水したかと思えば、妹子を見て言った。
「お前小さいな」
「余計なお世話だよぶっ殺すぞ!」
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