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「見てろよ妹子!ホリャッ!聖徳水鉄砲!!」
「そんな子供みたいなことではしゃがないで下さい太子!しかも無駄に高いし!」
「毎日風呂で練習したからなぁ」
「無駄に高くするための無駄な努力!?そんなことしてるんだったら仕事しろ!」
「つれないなぁ妹子。それっ!」
「かけてくんな!」
妹子を水鉄砲で攻撃し始める太子。妹子が桶でお湯を太子にぶっかけてしまおうかと考えた時、二人より先に湯に浸かっていた二人組の一人が声を上げた。
「ブファッ!?曽良君いきなり何すんの!?」
「あの人がとても楽しそうに水鉄砲を撃っているもんですから試してみたくなりました」
「それ私に当てる必要ないよね!?なんで当てたの!?師匠だよ私!」
「世の中には関係ないことってあるじゃないですか」
「師弟関係大事だから!関係なくないよ!」
ギャーギャーと騒ぎ始めた二人組に、妹子は桶を持つ手を止め、二人組の方をちらりと見た。
その時、曽良と呼ばれていた若い男と目が合った。曽良はぺこりと会釈をすると、先ほど話していた男へと視線を戻し、無表情で言い放った。
「ほら、芭蕉さんがうるさいから他のお客さんに睨まれてしまったじゃないですか」
「「えっ!?」」
妹子と芭蕉と呼ばれた男の声が重なる。芭蕉は妹子の方へと身体を向けると慌てて頭を下げた。
「騒がしくてごめんなさい!でもそれは曽良君のせ…」
「その程度で許されるわけがないでしょう。土下座なさい」
「このドエス!鬼畜夫!」
「誰が鬼畜夫だ!」
「ペプシッ!!」
水鉄砲を芭蕉の顔面へ命中させる曽良。妹子はそのやりとりをしばし呆然として見ていたが、ハッと我に返ると、芭蕉をぶくぶくと水に沈めている曽良を全力で止めにかかった。
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