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「うわ…酷いですね……」

「これ、鬼かな?誰が殺ったんだろう…?」


目の前に広がる血の海とおびただしい数の肉塊。殺られてから数日経っているらしく、肉塊から放たれている腐臭に二人は顔を顰めた。


「太子の匂いとも相まって最悪の気分です…。太子、早く行きましょう」

「なぁ妹子。これって殺った奴の武器かな?」


そう言って太子は鬼の頭部に突き刺さっている矢を指差した。


「鬼に刺さっているのならそうなんでしょうね。にしてもこの殺され方……三人いるんでしょうか?射殺と斬撃と……こっちの死体はやけに断面が綺麗ですね」


妹子の言葉に矢を調べていた太子もそちらを見る。


「確かに私みたいに滑らかな切り口だな……。斬殺は斬殺なんだろうが、剣でこんな綺麗には切れないぞ?」

「あんたはぬめぬめしてるだけでしょうが!太子が言うのならそうなんでしょうね。なら一体これは……?」


そこまで考えたところで妹子の視界がぐにゃりと歪んだ。


「っ……。太子、もう離れましょう。この暑さと匂いで気分が悪くなってきました」


鼻を抑えてゆっくりと歩き出す妹子。若干足元がふらつく。


「ん〜そうだな。私もそろそろ歩き疲れちゃったし早く宿行って休もう!」

「ええ……」


意気揚々と歩き出す太子に妹子は心の中で『子供か!』とつっこんだ。

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