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「神宮!止まれ!」
「やーだね。お腹の調子が悪いので保健室に行ってきていいですかー?」
「そんなに走り回ってるのに通用するか!痛いなら止まれ!」
「やだ先生。言ってることが矛盾してますよ?」
「じ〜ん〜ぐ〜う〜!」
「やっべ!」
何か叫んでいる様だが聞こえない。というかあれは…
「神宮会計か……。追っかけてるのは阿部先生かな?おー、走ってる走ってる。頑張れー」
校庭を走り回る二人を教室から応援する。
「こうなったら応援を呼ぶしか……ニャンコさん!」
「なんだ阿部さんか。どうした?」
「神宮を捕まえてくれ!授業放棄者だ!」
「またお前か神宮。毎回毎回……」
ん?あれは生徒指導のニャンコさんだ。どっから出てきたんだ?
「ニャンコ先生!どっから出てきたの?」
「ニャンコさんだ。そんなに罰則を受けたいのか神宮」
「受けたくなーい!だから逃げるね、バイバイ!」
神宮会計が地面に何かを叩きつけたと同時に煙幕が発生し、校庭にいる三人を包んだ。
「ごほっ、ごほっ!くそっ、神宮!」
「罰則は受けたくないんだ!じゃあね阿部先生、ニャンコ先生」
「ニャンコさんだと言ってるだろうが。絶対に逃がさんぞ」
二人が煙幕で視界を奪われている隙に、神宮会計が煙幕を突き破って校舎へ去って行くのが見える。
今回は神宮会計の勝ちかなぁと笑みが零れた時だった。
「小野!小野!」
「はっ、はい!?」
先生に声をかけられていることに気づき、慌てて返事をする。
まずい、気づかなかった。この先生苦手なんだよなぁ……どうしよ。
「私の授業で上の空とはいい度胸だな小野よ。やはりイナフと呼んだ方がいいのか?」
「イナフじゃなくて妹子です、竹中先生」
腕組みをしてこちらに鋭い視線を向ける竹中先生に顔が引きつる。
竹中先生はしばらくじーっと僕を睨んでいたが、「ふぅー」と息を吐くと僕から視線を外した。
「まあいい。たが次声を掛けた時にすぐに返事がなかったら特別課題追加するぞ」
「はい。すみません」
ふぅ、なんとか切り抜けたな。
安堵の息を漏らし、教科書を開く。ちらりと窓の外を見たが、校庭にはもう誰の姿もなかった。
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