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「ーーー本当に美味しいから今度行ってみなよ」

「そうだね。そんなに言われたら僕も気になるし、明日にでも行ってみるよ」

「おう!感想聞かせてくれよな」


ーーーーーキーンコーーン


始業のチャイムがなり、前を向く。ワトソン君に教えてもらった美味しいパン屋の情報を書いたメモを胸ポケットに入れたとき、ちょうど先生が入ってきた。


「イーーンパーーーーークトゥ!!!!」


ドゴーン!


「「「……え?」」」


全員の声が重なった。今起きた出来事を簡単に説明しよう。

先生がバク転して入ってきた→着地失敗して顔から床に激突した→みんな呆然(←今ココ!)


床に激突した先生はガバッと起き上がると、痛がる素振りも見せずに教壇に立った。


「皆オハヨーー!私のインパクトはどうだった!?」


うわぁ…すっごい目キラキラしてる……。


「そこの君!どうだった!?インパクトあっただろう?」

「え、と…そ、そうですね。インパクトはありましたね……」


先生の真正面に座っていた生徒が苦笑いで答える。しかし先生は十分満足したようで、嬉しそうに出席簿を取り出した。


「じゃあ出席をーーー」

「あ、あの。先生、質問してもいいですか?」


僕の前に座っていた男子生徒が控えめに手を上げる。


「何かね?もじゃもじゃ君」

「もじゃもじゃ!?え、えっと、ベル先生はどうしたんですか?」


僕達の担任はグラハム・ベル先生だ。普段はいい人だけど、あの人には少し変わったところがある。


「ベル先生は職員室の食器を割ってしまったショックでネガティブモード全開中だ。今頃自分の席の下でうずくまってると思うぞ」


そう、ベル先生は重度のネガティブなのだ。ちょっとしたことで、信じられないほど塞ぎ込んでしまう。
その為、今日のように休んでしまう時も珍しくない。そこがベル先生の難点だったりする。


「あの人また……。職員室に感染してなきゃいいけど……」


ワトソン君の呟きが後ろから聞こえる。ベル先生のネガティブ病の感染を気にしているらしい。なんだかんだ言ってベル先生と一番仲がいいのはワトソン君だから、あとで何とかしてくれるだろう。


「それで副担のハリス先生が入ったと……」

「そういうことDA☆ というわけで出席とるぞ。インパクトのある返事をしてくれ!」


出席確認にインパクトとはまた無茶振りを……。

僕達の副担任、タウンゼント・ハリス先生はインパクトがあることで有名だ。日々インパクトを追求し、通りかかった生徒にもインパクトを要求しているらしい。
そういえばこの前技術部に置いていた戦車もハリス先生のだったな……。何に使うんだろう。


「小野イナフッ!」

「イナフじゃなくて妹子です!なんでそれ知ってるんですか!」

「竹中先生に聞いた。なかなかインパクトのある名前だ。三インパクトくらいだな」

「三インパクトって何ですか……」


竹中先生、他の先生にもあの呼び方広めているのか……恥ずかしいから止めて欲しいけど言ったら面倒臭そうだから言えない……。


ハリス先生が出席を取っているのを見ながら、僕はぼんやりとそんなことを考えていた。

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