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曽良はしばらく閻魔先輩をジッと睨んでいたが、やがて諦めたように息を吐いた。
「わかりましたよ……僕がこれ以上嘘をついても閻魔先輩には勝てませんし、本当のことをお話しします」
「やったぁ!」
「流石閻魔!」
ピョンピョンとはしゃぐ閻魔先輩と太子。未だに僕の口を塞いでいる太子の手を叩くと、太子は「あ、ごめん」と謝って離してくれた。
「で、本当の理由は何なんだ?」
ずっと黙っていた鬼男先輩が問う。いつの間にか、芭蕉先生まで曽良の近くに来て耳を傾けていた。
曽良はもう一度息を吐くと、少し拗ねたような表情で言った。
「……僕がタメで話すと、皆普通に話してくれないから嫌なんです」
数秒の沈黙が流れる。一番最初に声を出したのは太子だった。
「……ふっ…ふふふっ!もしかして曽良、それ言うのが恥ずかしくて嘘ついたのか?」
「そうかぁ〜…曽良も普通に人間だったんだなぁ」
「嘘つかなくても良かったのに〜。そんなに恥ずかしかったの?曽良っち」
先輩方、にやけが隠せてませんよ。
と言いつつも、実は僕も必死で笑いを堪えていたりする。まさかこんなに可愛い理由だと思わなかったのだ。確かに普段敬語の人が急にタメ口になるとビックリしてまともに返せなくなるかもしれないけど……っ!
芭蕉先生とヒュースケン会長も、顔を見合わせてくすくすと笑っている。
「何笑ってるんです……捻り飛ばしますよ」
「今そんなこと言われても怖さ半減だなぁ」
「それ以上笑ったらぶん殴りますよ……芭蕉さんを」
「私に飛び火!?ヤメテー!殴らんといてー!」
ぶるぶる震えてヒュースケン会長にしがみつく芭蕉先生。いつもの調子を保とうとしているものの、羞恥のせいか少し顔の赤い曽良に、ヒュースケン会長が声を掛けた。
「ふふふ、河合君にも可愛いところあったんだね。紅茶でも飲んで落ち着きなよ」
「どうも……」
ニコニコ笑って曽良のティーカップに紅茶を注ぐヒュースケン会長。曽良はそれを一口飲むと、落ち着いたように息を漏らした。
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