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その後生徒会室にあった皿にそれぞれケーキを移し、太子の「最初の一口は一斉で」という謎の提案により、芭蕉先生の買ってくれた桜ケーキを皆一斉に食べることになった。
……いや、美味しかったけれども。
そして今は皆それぞれの話をしながら自由に食べている。ぱっと見女子会に見えなくもない。……いや、男七人でそれはないか。
僕はというと。
「そ、曽良……そんなに食べれるの…?」
「?食べられないのに買うわけがないでしょう」
曽良のケーキの多さに脱帽していた。
太子に買ってもらったガトーショコラにモンブラン、閻魔先輩に買ってもらったフルーツケーキにショートケーキ、さらに自分で買ったロールケーキにレアチーズケーキ……いやいや多い多い多い。
「お腹壊すよ!?それにそんなに甘いものばっかりじゃ胸焼けするって!」
「僕は甘党ですから。妹子が心配することではありません。それにデザートは別腹というでしょう」
「別腹デカすぎだよ……。まあ、曽良が食べられるならうるさいことは言わないけど」
と言いつつもう一度曽良のケーキに視線を向ける。……レアチーズケーキ、美味しそうだな。買っておけば良かったかも。
「それはどうも。………なんですかその視線は」
「えっ!?あ、いや!なんでもないよ!?」
「……ハァ。貴方だって人のこと言えないじゃないですか。欲しいなら欲しいとハッキリ言ったらどうです?」
どうやらばれていたらしい。人のものを貰うのは行儀が悪いような気もするけど……でも欲しい!
「曽良、それ一口下さい!」
「素直でよろしい」
曽良はレアチーズケーキを一口分切り分けると僕に差し出した。
「口を開けて下さい」
「へっ!?」
「食べるんでしょう?口を開けて下さい」
グイッとさらに口元に近づけられる。いやでも男同士でこれは……。
「何恥じらってるんですか。女子ですか?」
「いやでもさ……」
「いいから開けろ!」
「はいっ!」
あー、と口を開けたと同時にポイっと放り込まれるレアチーズケーキ。うん、美味しい。でもなぜケーキを貰うだけでこんなに怖い思いをしなければならなかったんだろうか。
「美味しいですか?」
「うん、ありがと曽良」
「……構いませんよ」
ふいっと顔を背けられる。……照れてたりして。いや、それはないか。
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