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幸せな気分で紅茶を飲んでいると、隣の曽良が少し不満そうに眉をしかめて何処かを見ていた。

視線を辿ると、そこには辺りに花が飛んでいるのかと錯覚するほどに満面の笑みの芭蕉先生。その手元には特別に砂糖二倍のミルクティーがあった。

………なるほど。


「ヒュースケン会長」

「ん、どうしたの?小野君」

「すみません、砂糖をいただけませんか?実は僕も結構甘党なんです。曽良もどう?」


急に話を振られビックリしたのか、曽良のミルクティーを持つ手がビクリと揺れた。少しの沈黙の後、いつもの無表情のまま曽良は軽く頷いた。


「僕もいただきます」

「そうだったんだ。じゃあ角砂糖の方がいいね。持って来るからちょっと待っててねー」

「ありがとうございます」


再び奥に消えていくヒュースケン会長。途端にこちらをギロリと睨む曽良にヒクリと頬を引きつらせる。


「何のつもりですか」

「へ?」


小さな声で問う曽良に、思わずこちらも小声になる。


「貴方は甘党ではないはずです。どちらかというと、辛党だった筈ですが?」


なんでそんなことを知ってるんだ。


「んーと……気分、かな?たまに無性に甘いものが食べたくなる時があるでしょ?」


そう言うと、曽良は不機嫌そうに眉を寄せた。


「……そうですか。ありがとうございます」

「…なんで礼言うの?」

「気分です」

「……そっか。じゃあどういたしまして」

「…そのニヤニヤを止めなさい。見ていて腹立たしいです」

「えへへ〜」


嬉しくなって笑いが漏れる。曽良に頭を叩かれたが、僕の気分は昇ったままだった。

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