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ラプンツェに向かう道を男六人で歩く。端からみれば只の下校途中にも見えるが、内容を知っている者からすれば異様な光景だった。

そもそもラプンツェは女性に人気なのだ。こんな男沢山で店に入ったら変に思われるに違いない。いや、変人ばかりだから別に良いのか?


「曽良は何買うの?」

「そうですね……。今はガトーショコラが食べたい気分です。ああでもフルーツタルトも食べたいですね」

「そ、そっか……。楽しみだね」

「ええ」


食べたい物を連想している時ってもう少し頬が緩むものではないだろうか。やはり曽良のポーカーフェイスは並大抵のことでは崩れないらしい。

僕達の後ろでは、鬼男先輩と芭蕉先生が楽しげに談笑していた。そして僕達の前を歩く太子達はというとーーーーーー


「いけっ!リーフストーム!」

「くっ…やるな閻魔!だが負けないぞ!リザードン!かえんほうしゃ!」

「あぁっ!メガニウムゥゥゥ!くっそおおお!仇を取るんだカメックス!」


………ポケモンに熱中していた。

どうやら通信対戦をしているらしく、さっきからポケモンの名前や技名を叫んでは悲鳴をあげていた。

その様子を見た芭蕉先生が慌てた声を上げた。


「こら!閻魔君に太子君!歩きながらゲームしちゃダメでしょ!車に轢かれたらどうするの!」

「あぅ……ごめんねばしょー先生」

「……すまん」


ショボンとしてゲーム機を鞄にしまう二人。あれ?意外だ。阿部先生の言うことを聞かないなら芭蕉先生の言うことなんて余裕で聞き流すと思っていたのに。

隣を見ると相変わらずの無表情で曽良が歩いている。どうやら興味がないらしい。

鬼男先輩を見ると、僕の心情を悟ったのか苦笑すると顔を寄せてそっと耳打ちしてきた。


「芭蕉さんって言うこと聞かなかったら泣いちゃうんだよね。だから二人も芭蕉さんの言うことは素直に聞くってわけ」


なるほど、そんな秘密があったのか。あれ?じゃあ曽良もそうなのか?

もう一度曽良を見る。やっぱり無表情のままで歩いていた。何を考えているのか全くわからない。ジッと見ていると視線に気づいたのか、訝しげに眉を寄せてこっちを見た。


「なんです?」

「いや、曽良も芭蕉先生の涙には弱いのかなと思って」

「あのジジイが泣いたところでイライラが高まるだけです」


……それはどっちなんだ?弱いのか?弱くないのか?

微妙なところだな。

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