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「ーーーーで、みんな何してるの?昼休みあと少ししかないけど……」
「はぁ……聖屋先輩達のせいですよ。モンブラン食べられなかったじゃないですか」
「そ、曽良っち…?顔が怖いよ……?」
黒いオーラを放つ曽良に閻魔先輩が顔を引きつらせながら恐る恐る声をかける。
曽良はジロリと閻魔先輩を睨むと、「はい…?」とドスの効いた声を返した。「ヒィッ!」と閻魔先輩が情けない声を上げる。
「その……ごめん、ね?ほ、ほら!放課後なんか奢ったげるから!」
「わ、私も奢るぞ?だから……ゴメンナサイ」
正面の曽良がよっぽど恐ろしいらしく、ガタガタと震えながらそう告げる二人。『奢る』というワードに曽良の肩がピクリと揺れた。
「奢る?」
「お、おうっ!何でもいいぞ?」
「う、うんっ!何か言ってみんしゃ〜い!」
曽良は少し考えるそぶりを見せた後、パッと顔を上げた。
「放課後、【ラプンツェ】に連れてって下さい。そこのケーキ二つでチャラにしてあげます」
ラプンツェとは学園の近くにある美味しいと評判のケーキ屋だ。放課後に立ち寄る生徒も少なくないらしい。
あそこのケーキ美味しいんだよなぁ……。
「わかった!折角だし皆で買って生徒会室で食べよーぜ!ばしょー先生も!」
「え?私も行っていいの?」
「いいんじゃない?今日は元々生徒会ある日だし。顧問なんだから全然問題ないっしょ」
「そっかぁ!ふふ、ありがとねー」
太子の言葉に納得した芭蕉先生は生徒と一緒に遊べるのが嬉しいのか、「ふへへー」と気の抜けた笑い声を零している。
「じゃあ鬼男君も誘っとくねー。生徒会室で食べるならヒュースケン先輩の分も買っとかなきゃね」
「ふふ、楽しみだなー」
ニコニコと笑い合う僕達だったが、内心曽良の怒りが収まってくれたことに心から安堵していた。
昔曽良がキレた時は本当に人殺しちゃうんじゃないかと思ったからなぁ。
放課後の約束を取り付けた僕達は、予鈴と共に解散した。
クラスメイト達が説明を求める視線を向けて来たが全て無視した。
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