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「おーっす、妹っこに曽良っち」
人混みを掻き分けて僕達の前に現れた太子と閻魔先輩。閻魔先輩もいたんですね、気づきませんでした。
「こんにちは。っていうか何してるんですか?」
どうやら廊下が騒がしかったのは太子達のせいらしい。先ほどまで別の方向に向けられていた廊下にいる生徒やクラスメイト達の視線が僕達に集中していて、一刻も早くここから立ち去りたくなった。
「いやー、妹っこ達のところ行こうとしたんだけど、一瞬で囲まれちゃって身動き取れなくなっちゃってたんだ。っていうか曽良っち、挨拶は?」
「神宮先輩、聖屋先輩こんにちは。まだデザートを食べていないので失礼します」
そう言って立ち去ろうとする曽良を太子が苦笑いで引き止める。
「まあ待てって。あと私のことは太子でいいって言ってるだろ?」
「聖屋先輩の方が呼びやすいんです。僕の代わりに妹子が下の名前で呼んでるんだからいいでしょう」
「妹子は妹子、曽良は曽良だろー」
「そうですね。妹子は妹子、僕は僕なので僕は聖屋先輩と呼ばせていただきます。個人差があっていいでしょう?」
「むー……そうだけどさぁ」
「納得していただけましたか?では失礼します」
「待て待て待て」
クルリと踵を返そうとする曽良を再び引き止める太子。嫌々振り向いた曽良は明らかに不機嫌だ。
「なんですか」
「どこでデザート食べるの?」
「屋上ですけど」
「私達も行く!」
「うるさいので結構です」
「ひどい!いいじゃんー」
太子に引っ付かれ、曽良の苛立ちが最高潮に達した時。
「あ、曽良君だー。皆まで。何やってるの?」
「そおい!」
「ダンザイッ!!」
僕達を見つけ駆け寄ってきた芭蕉先生の頭に突然チョップを繰り出す曽良。
曽良は悪びれる様子もなく言う。
「すみません芭蕉さん。サンドバックかと思って……」
「サンドバック!?チクショーもう既に人じゃない!酷いよ曽良君!」
「イラついてたんでつい……」
「ついで先生をサンドバックと間違えられるの…?」
頭をさすりながら立ち上がる芭蕉先生。
「だ、大丈夫ですか?芭蕉先生」
「あー全然大丈夫だよー。やられなれてるから」
「それは先生としてどうなんだろう……」
曽良と芭蕉先生の間に上下関係というものはないらしい。
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