はじめが私を、“好きだ”と言った。 それは、今までずっと待ってた言葉で。 たくさん頭の中で繰り広げていたシーンで。 すごく特別で、愛しくて、優しくて、大切で、温かい、言葉だった。 心がこんなにキュンとなると思わなかったし、こんなに泣くなんて、思わなかった。 私、今、すごくドキドキしてる。 ねえ、はじめ? あなたが思うよりもずっと私、あなたのこと、大好きなんだよ。 episode26 "one two sleep" 「大好きだよ、はじめ」 「なまえ、」 「好き。・・・・・・えへへ、大好き」 自分が、どれだけ緩んだ顔を、だらしのない顔をしているのか、想像はつく。 私も、ずっと胸の中に閉じ込めた思いを口に出すことができて、心が軽くなった気がするし、やっと通じ合った好きの気持ちが、すごく嬉しい。 私の想いを告げると、はじめが急に私を抱きしめて、耳元で囁いた。 「もう、二度と離してなどやらん。あんたは、俺の隣が一番似合う」 今まで、こんな風に大胆に、言葉にしてくれたことなんてなかったから、正直びっくりした。 けど、それ以上に、囁かれたその声と、吐息に、一瞬心臓が止まったかと思った。 「・・・ず、ずるいっ・・・そういうの・・・」 耳がすごくくすぐったくて、身をよじらせると、私を抱きしめていた腕は、離さないと言わんばかりに、ぎゅうと一層きつくなる。 「それからもう一つ、あんたに言いたいことがある」 「何・・・?」 好きだ、と言われたあとに続く言葉って、あれだよね。 付き合って欲しいとか、彼女になってくれとか、そういう類の――― 「・・・・・・“家族みたいな存在”ではなく、ちゃんと、あんたと“家族”になりたい」 ・・・・・・・・・な・・・。 ・・・なん、て・・・? 今、何て、言ったの? 私の聞き間違いなんだろうか。 「なまえ、聞いて―――」 「い、いいいいいいっ、いまっ・・・なにっ・・・・・!?」 がば、と顔を上げると、ほんの少し頬を染めた彼は、不思議そうな顔をして私を見つめていた。 その、きょとんとした顔は、可愛い・・・ってそうじゃなくてね? 「な、何て言っ・・・・・・」 「あんたと、家族になりたいと、そう言った」 ・・・なにこれ、なにこれ、なにこれ。 私、夢でも見てるんだろうか。 口から飛び出そうな心臓は、外に音が聞こえるんじゃないかと思うくらい、バクバクいってる。 「家族、って、その・・・・・・」 ここまで言われても、自信がない私は、本当に臆病なんだと思う。 ちゃんと言葉にしてくれないと、不安なんだ。 「だ、だから、だな・・・・・・家族、というのは、その・・・寝食を共にし、親族同士が生活を―――」 「・・・・・・ぷっ、」 「な、何故笑うのだっ」 「あははっ、だって、・・・・・・ホッとした」 「どういう意味だ」 「いつものはじめだと思って」 重なってる胸から聞こえる、伝わる、お互いの鼓動はすごく早くて。 別に、競争をしているわけでもないのに、私のほうがドキドキしてる、なんて言いたくなる。 「それで、家族になるには、どうしたらいいの?」 私のその質問に、真っ赤になったはじめが、視線を泳がせて、何か言いたげに口を開いたけれど、それは音になんてならなかった。 「・・・・・・っ、」 「はじめさん?真っ赤ですよ?・・・ふふ」 「・・・・・・俺をからかうと、どうなるかわかっているのか?」 はじめを下敷きにして、倒れ込んでいたソファ。 むくりと彼が体を起こすと、私は彼の膝の上。 「どう、なるの?」 彼の、シャツをぎゅっと握って、上目遣いでそう問えば、何も言わずに、降りてきたキス。 「・・・・・・ん」 優しい。 啄むように、何度も、何度も。 気持ちが通じ合ってからのキスは、こんなに違うんだね。 どうしよう、嬉しすぎて、幸せすぎて、涙が出る。 「・・・なまえ?」 「ごめ・・・・・・嫌なんじゃなくて、嬉しくて」 はじめが、私の流した涙を拭うように、頬にキスを落とした。 「・・・へへ、くすぐったいよ」 猫みたいに、ペロ、と私の頬を舌がなぞる。 「なまえ」 「なに?」 こつん、と額を重ねてきた彼が、ぽつりと、つぶやいたんだ。 「・・・・・・抱いて、良いか」 prev next |