ショートコント"メガネ"
「う、わ・・・きっつ!!」
視力1.5。かけ慣れていない眼鏡のレンズ越しの視界は不良。
私を放って読書に夢中なはじめの眼鏡をひょい、と取り上げてかけてみた。
ちょっとは私に構ってよ。・・・せっかく思いが通じたばかりなのに。
「何をしている」
「え?あはは!だめ、返してあげない!」
「またお前は。ふざけていないで、さっさと返せ」
眼鏡に手を伸ばしてくるはじめを制して、片手でそれを遠ざけた。
「やだー!私、眼鏡かけてないはじめが好きだもん!」
耳を貸そうとしない私にため息をついた彼は、パタンと本を閉じると、キスでもできそうなくらいの至近距離まで顔を寄せてきた。
「俺は、これが無いとよく見えぬのだ。故に、返してもらう」
驚いて固まっていた私の手の中からするりと、眼鏡は奪われてしまった。
「ちょっと!!!ずるい!!!!!」
「あんたの顔が見えないのは、不本意だ」
そう言って眼鏡を掛け直したはじめをみて、ぷう、と頬をふくらませれば、片方を人差し指でつん、とつつかれた。
「いつも、先程の距離であんたを見ていても良いのであれば、望み通り眼鏡は外しておくが」
「・・・・・・もっと、近くていいよ」
ちゅ。
おわり!
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