「ねえ、山崎くん」

大学の、同じ講義を終えて食堂に向かうところ。

小学生の頃なら“お前ら結婚してんのかよ〜”なんてからかわれる、偶然同じ苗字の彼を呼べば、いつもと同じ、無表情で振り返る。

「何か」

「・・・もうっ、冷たい冷たい!」

「別に、そんなつもりは・・・」

ぷくりと頬を膨らませてじとっと睨めば、ほんの少し彼が慌てた。それが、可愛いんだ。

だから楽しくてよくからかってしまう。

「もうすぐクリスマスだよ?なんかちょうだい、山崎くん」

「な・・・何か、と言われても」

彼が真面目なのは知っている。私のふざけた言葉に本気で考え込んでいるらしく、眉間にしわが刻まれていた。・・・だから、可愛いんだって。

「・・・あ、じゃあこうしよう!」

パチン、と手を叩いた私のわざとらしいセリフと仕草に、やれやれとため息をつきながらご丁寧にも「今度はなんですか」と聞いてくれる。

「ススムくん!」

「は・・・・・・」

「だから、ものは要らないからさ、名前で呼ぼう?お互い同じ苗字で呼んでるのもよそよ
そしい気がするの。ねえ、ススムくん?」

と、彼の前に回り込んで顔を覗き込めば、予想以上に顔を真っ赤にして固まっていた。

「と、突然そんなことを言われても、その・・・」

「・・・ちょっ・・・や、やだ、そんなに照れる必要ある!?私までなんか恥ずかしくなるって!名前で呼ぶだけなのに・・・っ」

照れるのはわかってたけど、予想以上すぎて。


「ご、ごめん、冗談、聞かなかったことに―――」


私の言葉を遮って、真っ赤な彼が、初めて私を名前で呼んだ。



「ず、ずるい!」

「・・・どっちが」


別に、何も物は要らない。

欲しいのは、あなたと過ごすこの幸せな時間なの。



***採用させていただきました***
“照れ顔が見たい!多分死ぬ。萌え死ぬ。”
共に昇天しましょう(^^)ご協力ありがとうございました!!



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