「・・・きれい」
「・・・なにそれ、フリ?君の方が綺麗だよとか言わなきゃいけないやつ?」
「馬っ鹿!」
学校帰り。
せっかくクリスマスなのにクリスマスらしいこと全然してない!と嘆く私に、じゃあクリスマスっぽいことしようか。なんて悪戯な笑顔を見せたのは、幼馴染の総司だ。
ちょっとだけ電車を乗り継いだ先は、友達とよく買い物に来る場所。
この時期になると、大通り沿いの歩道に等間隔に植えられた木の枝先まで電飾がくくりつけられて、カップルたちの溜まり場、もとい、クリスマスの名所と化す。
「何が悲しくて幼馴染とイルミネーション見に来てるの私・・・」
「・・・行こうって賛成したの自分でしょ」
「そうだけどっ!」
いちいち総司に構っていてはキリがないしただ疲れるだけだ。
私はもう何度目かわからないけれど、腰掛けたベンチから空を見上げた。
本当に綺麗だ。
青白く光を放つただの小さな光の集まりなのに。
こんなにも美しく見えるなんて。
「あのさ」
「んー・・・?」
手を伸ばしただけではとても届かないその木の枝の先までじっと見つめたまま、私は気のない返事をした。
「僕と君が幼馴染じゃなかったら、もう少しいい雰囲気になったのかな?」
「そうじゃん?恋人だったら絶対クリスマス満喫してるでしょう」
「僕はいつでも、幼馴染やめてもいいんだけど」
「へぇ、そう」
・・・・・・?
うん?
「総司?今なんて・・・?」
「あ、やっとこっち見た」
「幼馴染やめるって?なにそれ、絶交ってこと!?」
「・・・は?」
今まで当たり前のように居た存在が居なくなってしまったら?
なんでも言い合える関係で、いろんな相談を今までしてきて、どうでもいいことで笑い合って。
ぽっかりと心に穴が空いたみたいになるんだろうか。
「ちょっと待って、なんか結構寂しいかも知れない・・・」
「ねぇ、今の話の流れ理解してる?」
「・・・・・・と、言いますと?」
「幼馴染やめて、恋人になったらどうかなって言ってるんだけど」
「・・・・・・誰と誰が?」
「僕と君が」
「・・・・・・え、え!?ちょっと、待って?総司は私のこと、す、すすすす、す、す」
「好きだよ」
さらりと、当たり前でしょ?な顔をして言い放つ総司に、何て言葉を返していいか分からないし。
そもそも、そんな風に見たことなんてなかったし、だけど・・・。
「だって・・・私別に、総司と手をつないでもドキドキなんてしないし」
「・・・そんなの、友達同士と恋人同士じゃ別物だよ」
「じゃあ、総司は私をドキドキさせられる?」
「・・・試してみる?」
・・・・・・っ!
ごめん、もうドキドキした。とか、そんなの総司に負けたみたいで悔しいから、まだ言ってやらないけど。
おしまい。
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