**龍之介編**
ゴクリ・・・。
俺は今、体中が震えている。
靴箱を開けたらそこに、男子なら誰もが期待をする物が入っていたからだ。
今日はバレンタイン・・・深く考えずともこれがチョコレートであるということくらい分かる。
「ま、まさか・・・」
そっと箱に手を伸ばし、持ち上げると・・・・・・持ち、上げる、と・・・。
「・・・って、空かよっ!!誰だよこんな悪質な悪戯すんのっ!!」
すぐにくしゃりと握りつぶしてやろうかとも思ったが、なんとなく箱を開いてみれば、ふたつ折りの紙が入っていた。
これまたゴクリと喉を鳴らしてしまう自分が、もしかしたらとここまできても淡い期待を抱いていることに恥ずかしくもなる。
“残念でした。沖田”
「くっ・・・!!!」
堂々と名乗ってしまう辺りこの人のすごいところだ。そこは・・・本当にそこだけは少し尊敬する。
「・・・ん?」
ふわりと、甘い香りが漂う。
どうやら、自分がもらったチョコレートの箱を使ってこんなことをして楽しんでいるらしい。
しかし・・・。美味そうな香りだな。
この香りで空腹が満たせるんじゃ・・・いや!それよりもだ!!
“沖田先輩の食べたチョコレートの箱”高く売れるんじゃないか・・・!?
「・・・ねえ、今良からぬ事を考えている顔になってるけど大丈夫?」
「うわっ・・・!?見てたのかよ!!」
「その良からぬ事の売上はもちろん僕に入るわけだよね」
・・・ビクッ。
END
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