ひんやりとした空気が体を覆った。

それが一瞬だけ涼しいと感じたのは、窮屈な満員電車からやっと解放されたから。

「・・・っ、はー」

「大丈夫か?」

さっきまで電車の中で私を後ろから包み込んで守ってくれていたはじめが、私の手を取った。

ありがとう、と笑うと彼も優しく微笑んでくれる。

初めてその笑顔に出会えてから、私はずっと、はじめの虜だ。

「やっぱ、外は寒いねっ」

体を縮こまらせたところで、少しも変わらないけれど、私たちはいつもよりもちょっぴり早足で家へと急いだ。

「・・・・・・はじめ?」

隣を歩いていたはずの彼の手がするりと離れて、冷たい風に手のひらが撫でられる。


「その、いつ渡そうかと、ずっと・・・」


ああそうか、だから今日はいつもよりも大きいカバンだったのか。

私の目の前に差し出された、クリスマスプレゼントらしいそれを受け取った。

「ありがと」

なんだろうかとガサガサと、きれいにラッピングされたそれを開けてみると

「あ・・・・・・マフラー?かわいい・・・ん・・・なんかどっかでみた・・・っ!?・・・は、はじめ!?」

私の手の中にあるそれは、まさに目の前の彼の首に巻かれているそれと色違い。

「気に・・・入らなかったか・・・?」

「ち、ちがうのっ」

「あんたが以前、これを物欲しそうに見ていた故・・・流石に同じ色を買うわけにもいかんだろう」

これを選んでくれたこと、私が欲しいと思っていたこと。覚えていてくれたことがたまらなく嬉しい。

もらったマフラーを首に巻きつけて、冷たくなった両手を取って彼を見上げた。

「ありがと!すっごく嬉しい!」

そうして、優しくキスをしたあとで。

「出かけるときに一緒にしていこうね?」

「・・・・・・ど、努力はしよう・・・」

照れ屋なあなたが、大好き。



***採用させていただきました***

“斎藤さんから、マフラーをもらいたいですねー。 ちゃっかりお揃いで…”

他にも斎藤さんはマフラー票が多数だったので。中でもおいしい設定のこちらを。

投票ご協力いただきました方、本当にありがとうございました!



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