「・・・・・・でさぁ、この前、」

恋人との他愛もない会話。

足元もそんなに注意してなかった。

確かに、ヒールのあるブーツを履いてはいたけれど、雨だって、雪だって、降っていなかったもの。

地下鉄で移動をしようと、改札へ向かう下りの階段。

多分、隣のイケメン彼氏に意識を全部持って行かれて、注意力散漫してたんだろう。

ずる、っと見事に足を滑らせて、踊り場に尻餅を付いてしまった。

「いったぁ・・・」

転げ落ちなくてよかったと思いつつ、ただとにかくお尻が痛くてたまらない。

「悪い、大丈夫か?」

「え、何、なんで左之が謝るの・・・?」

座り込んだままの私の隣にしゃがみこみ、本当に申し訳なさそうな顔をすると、大きな彼の手が私の頬を撫でた。

「守ってやれなかった」

付き合って結構経つのに、未だにこの色男にはドキドキさせられる。

「別に、私が勝手に転んだんだし、左之は悪く・・・・・・え、え!?さ、左之っ!?」

突然、ふわりと浮かんだ自分の体。

・・・これは、そうだ、あれだ。

「お、重いからっ・・・お、おろしてっ」

軽々と、私のことをお姫様抱っこした彼が、ニヤリと笑って言った。

「あー、確かに重いな」

「ちょっ、酷っ!そんなはっきり言わなくたって・・・」

「いや、これは・・・愛の重さってやつ、か?」

「・・・・・・な、何言って・・・っ!?は、恥ずかしいから、おろして・・・」

こんな人目に付く場所で、大声を出してしまえばそれこそ大注目を浴びてしまう。

とにかく体を小さくして、彼にぎゅっとしがみついた。

「それで?俺のお姫様は、何処に行きたいんだ?」

「ばっ・・・!おろしてって言ってるのに!」

彼の顔を見上げてそう言うと、ふざけていたはずのその顔が、急に真剣になり、私を見下ろした。

「・・・・・・足、捻ったんじゃねえか?」

「え・・・」

打ったのはお尻だけだった気がする。でもその痛みの方が強くて気がつかなかったのかな。

足を滑らせたときに一緒に捻ったのかも、と足首を少し曲げてみれば、確かにズキンと痛みが走り、思わず顔を歪めてしまった。

「・・・行き先決定だな。念のためもう一回聞くぜ?」




王子様はすぐそばに




「・・・左之のお家に連れてって」




merry christmas...!!


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