メランコリック・サスティーン



毎度毎度、扉を開けるだけでこんなにドキドキとしてしまうのは、相当彼女に惚れ込んでいる証拠。

僕を見るなり、「沖田くん」と、とろけそうなほど優しい笑顔で迎えてくれる。

「まだ居たんだね」

「先生は、生徒が帰ってからの方が忙しいの」

「ふぅん・・・」

そうして、診察用の椅子に座って、忙しそうな先生の横顔を眺める。

「夏休み中は私、学校には来ないから、仕事片付けていかなきゃいけなくてさー」

先ほど、長ったらしい先生たちの挨拶を聞き終えて、1学期の終業式を終えたばかり。

生徒たちはほとんど下校していて、残っている生徒はもうあまりいないだろう。





「・・・しばらく会えなくなっちゃうね」

ぽつりと呟いた先生。






―――僕に会えなくて寂しい?



思わず出そうになった言葉を飲み込んだ。




「それで?今日はなあに?」

何も言いださない僕を不思議に思ったのか、

先生は持っていたペンを置いて、僕の方に向き直った。

ふわっと、甘い香りが鼻をくすぐる。

君の声が聞きたくて、笑顔が見たくて、触れたくて―――

会いたいから会いに来ただけ。君の隣は僕じゃなきゃ嫌なんだ。

だけどそんなこと、言えるはずもなくて。


「うん・・・実は僕、重い病気かもしれないんだ」

「えぇ?またそんな冗談言ってー」

なだらかな肩を揺らしながら、クスクスと笑う先生の左手首をそっと掴んで、僕の額へあてる。

「・・・うん、ちょっと熱いかもね?」

先生に触れるのは毎度のこと。もう慣れてしまったのか、僕の行為に驚きもせず先生は言う。

「先生にしか治せない病気だよ」

額にあてていた左手を握って、軽く薬指にキスを落とす。

「・・・・・・」

そらした瞳は、照れているからだと、思ってもいい?

少しだけ赤くなった頬に、期待してもいい?




「せん・・・・・・」



「・・・・・・ごめん、その病気は私には治せないかも」




―――それって、





聞くのが怖くて、握っていた手をそっと離して立ち上がった。



「・・・なまえちゃんにしか、治せないよ」




「沖田くん、あのね、私・・・っ」





薬指に光る銀色のそれが、邪魔をしていることは初めて会ったときから知ってる―――



END

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