金曜の夜。
彼女が出来たばかりの沖田さんに、惚気話をしたいからと強引に居酒屋に連行された。
そして、何か浮いた話はないのかと問われ、そういえば前の彼氏と別れてからどれくらいだろうかと指折り数えてみれば、結構経っていることにぞっとした。
「・・・・・・私このまま死ぬまで一生一人で過ごすんですかね・・・」
「そうかもね」
「・・・じゃあ沖田さんが私を嫁に貰って下さいよ」
「・・・・・・・・・」
「いや、あの、そういうリアクション傷つくんで止めてもらえますか」
嘲笑するようなその顔で私のことを眺めていた彼が、途端に哀れみの目で私を見つめてきたのだ。
沖田さんなら冗談が伝わると思ったのに、そう不貞腐れれば
「君っていじめがいあるからさ」
と鼻で笑われた。
誰が好き好んでこんなに意地の悪い男と付き合うのだろう。彼女の顔を見てみたいです、そんなことを言った私の肩をがしっと掴んで沖田さんは嬉しそうに笑った。
「・・・・・・見る?」
・・・・・・しまった、最初からこれが目的だったんだろう。まんまと罠にハマった自分を呪った。
けれどこの沖田さんが好きになるのがどんな子なのか気になったのも事実。
もともと今日は沖田さんの惚気話を聞かされるために私はここにいるのだ。
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