「あはは!ちょっと、斎藤君面白すぎる」
「何故・・・」
「真面目かっ」
なんか隅っこから視線を感じて、イライラしてるのには気づいてた。
面白くなさそうな顔してスマホをいじってた彼が、誰も近づくなオーラ出してんだもん。
何か嫌なことでもあったかな、そんな風に思えるほど、私は鈍くはないつもりだ。
原因は絶対私だ。でも、何にイライラしているのかは、ごめん、わかんない。
付き合ってることを会社のみんなには内緒にしようねって言ったのは、総司の方なのに。
「・・・・・・あれ、そ・・・沖田、君」
怖いな、そう思ったのは、ニコリと笑って見えるのに、柔らかさや優しさが微塵も感じ取れない黒いオーラが出ていたからだ。
「・・・えっと、どうかした?」
「嫌だなあ、あんなに一君と仲良く話しておきながら・・・とぼける気?」
仲良くって・・・あれ、私そんなに親しげに話してるように見えていたのか。
「ごめん。・・・でもあれは別にそういうんじゃないし。もう、良いから早く戻ろう?みんなに気づかれちゃうかもよ?」
そう言って、私が席に戻ろうとした瞬間だった。
「・・・っ」
ドン、と壁を突いたのは総司の右手。
耳元から聞こえたその音に、私は思わず驚きに肩を震わせた。
「待ちなよ」
「・・・え?」
「ごめんって、それだけで終わりなの?」
「あの・・・何?どうしたらいい?」
「なまえちゃんからみんなに僕と付き合ってることを話すか、」
・・・それはちょっと勘弁して欲しいかも・・・。
「ここで、キスするか、どっちがいい?僕にしてみたら案外優しい選択肢だとおもうけど?」
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