昼休みは委員会の都合で彼女との時間を作ることができず、結局、放課後になってしまった。

「すまない、遅くなった」

鈍い音を立てながら屋上の扉を開ければ、目の前には手すりにもたれかかっている彼女の後ろ姿。

以前は、その背中を覆うように長い髪があったはずなのだが、それがないせいか、寂しそうに見えてしまう。

「ん、来てくれただけで十分だよ」

俺の声に振り向き、今度は手すりに背を預けた。

「ありがと」

「・・・すまない」

「だから、良いってば」

ほんの少し、サビが見えるその手すりを軽く握り、彼女が口を開くのを待った。

目下に広がる校庭からかすかに聞こえるのは、サッカー部の練習の声。

それをちらりと見やれば、彼女がぽつりと話しだした。

「朝、聞いてたはずだから、コレといって改めて何を言うとか、ないんだけどさ、斎藤くんには力になってもらってたから、ちゃんと言いたくて」

「ああ・・・・・・」

「金曜日にね、土方先生に告白したの。・・・で、振られた。完全に玉砕。隙もないんだもん、あの人」

今朝見たときとは違い、無理に笑う様子がなかった彼女に、正直ほっとした。
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