「原田せ・・・」

ガラリと勢い良く扉を開けたのに、足を踏み入れることを躊躇してしまったのは、原田先生に見惚れたから。

「よぉ。どうした?」

大きな窓を背に、柔らかい笑顔を見せた原田先生は、夕焼けの空の色がよく似合う。

「会いに来たの」

ぷかぷかと浮かんだ煙は開け放たれた窓の隙間から消えてゆく。

「そんなとこで消さないで。また全校集会でお説教が始まっちゃう」

私に気を遣ったのか、窓のサンにタバコを押し付け、消そうとしたらしいその行為を見て慌てて止めた。

先生の吸い殻で迷惑するなんて馬鹿らしい。

「授業、つぶれていいじゃねぇか」

「原田先生の授業がつぶれるのはイヤなの」

先生らしくないと、いつも思う。

肩を揺らして楽しそうに笑う原田先生。

「・・・やめちゃえば?体に悪いだけなんだから」と先生の隣に並んで、窓にもたれかかった。

「ばーか。んな簡単にやめられんなら・・・」

廊下から聞こえた近づく足音に、急に窓を閉めた原田先生。

腕を引かれたかと思えば、カーテンに包まれた。

太陽のニオイがいっぱいするそれとは反対に、タバコのニオイが鼻を突く。

「原田ァ・・・あいつ、どこ行きやがった?」

先生の腕の中に抱き締められたまま、土方先生の足音が消えるのを待っていた。

どき、どき。

タバコのニオイの他に、ふわり香るのは先生のいい匂い。

はぁ、と息を止めていたかのように盛大に息を吐き出して、ぎゅ、と抱きしめる腕に力が込められた。

「先生?」

提出してない書類がたまってるらしく、逃げていたらしい。

「すまねぇ、窮屈だったろ、今・・・」

緩められた腕に、離れてしまいたくない私は、ぎゅ、と先生にしがみついた。

「ん?なんだよ」

「離さないで」

「・・・聞けねぇなぁ」

「どうして?」

「今離れなかったら、何するかわかんねぇだろ」
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