終電ギリギリで土方さんに遭遇
「ちょっ・・・・・・はあ、はあっ・・・ま、待ってぇ・・・!!」
改札を抜けて、発車のベルが鳴っている最終電車に飛び乗った。
私の背中すれすれを、プシューという音を立てて扉が閉まる。
あ、あっぶなー。
ギリギリ終電に間に合った事に、切れた息を整えながら、安堵のため息をこぼしていると、周りから若干白い目で見られる。
「・・・みょうじ?」
すぐ左上くらいから聞き覚えのある声が降ってきた。
声の主を思い出そうと顔を向けると、大学時代の先輩。
「・・・え、わっ!?ひ、土方さんっ!?・・・・・・きゃ、ご、ごご、ごめんなさいっ」
発車後、ガタン、と容赦なく揺れる電車に、疲れ過ぎた足はヒールのせいで崩れそうになる。
ちょうど、彼の胸にもたれかかってしまったのを申し訳なく謝り、自身の足で立とうとするも、見事にすし詰めの最終電車では身動きが取れない。
「・・・す、すみませんっ」
「いや・・・不可抗力、だろ」
この状況に、ドキドキとしてしまうのは、相手が土方さんだからだと思う。そうじゃなきゃ、たぶん嫌な思いしかしない筈だもん。
「同じ、路線だったか」
「えっと・・・私、去年引っ越して・・・っ、わ、あの、」
彼の胸を借りているようなこの状況。
二度目のガタンに、よろめいた私の肩を抱いたのは土方さんの右手。
「・・・疲れてんだろ?無理してんなよ」
踏ん張りの利かない私の足は彼にお見通しらしい。
「すみません」
「・・・もう一回よろめいたら、抱き締めるからな」
「・・・は、はいい!?」
三度目のガタンまで、あと3秒。
END
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