貴女の温もりで

……………なんなんだろうこの方は。




環境整備委員会の活動中に突然現れた白薔薇のつぼみ。


「…あの、何かご用意ですか?」


ずっと見てくる彼女に私はつい声をかけてしまう。

すると彼女はニコッと笑った。
「貴女可愛いわね。1年生かしら?」



「……はい、1年生です」



可愛いという言葉をスルーして質問だけに答える。
「やっぱりそうよね、こんなに可愛かったらこの私が見逃すわけないめの」



それはどんな自信なのだろう。
そしてこの方の第一印象は。

「…変な方」

呟いた私の声が聞こえたのか白薔薇のつぼみは私の頭をくしゃっとしながら「言うわね」と言った。



「貴女の名前は?」



「藤堂志摩子と申します」



「志摩子、ね。私の名前は、」
と言いかけたところまで言葉を止めた。
否、止められてしまったのだ。


私の目の前には白薔薇のつぼみに抱き着いている白薔薇さま。

「……お姉さま、何のご用意ですか?」



「冷たいな〜。また女の子口説いてたの?」


私と白薔薇のつぼみの交互に見ながら茶化すように言う。
それに対して白薔薇のつぼみはため息を付きながら首を横に振り否定した。



「違いますから……。しかも私が何時も口説いているような感じに言わないでください。」


「ふふっ」


2人のやり取りについ笑ってしまうと白薔薇姉妹がこちらを向いた。


先に口を開いたのは白薔薇さま。


「あれ?どなた?」

「この子は1年生の、」



そこまで紹介されると目配せをさせられた。
まるで「ほら、挨拶をしなさい」と言われているかのよう。


「と、藤堂志摩子です」


「へぇ、志摩子って言うんだ。名前も可愛い子見つけたね。」


「お姉さまと言えど手を出すのは許しませんからね?」



「はいはい、承知していますよ」

おー怖い怖いと言いながら白薔薇のつぼみから離れる。


「私は先に館に行っているから」


「了解」


「それではごぎげんよう」

私の方向を向き言ったので私も慌てて挨拶を返した。


「ふぅ…。ごめんね私のお姉さまが。」


「いいえ、とても素敵な方だと思います」


「うん、ああ見えてやる時はやる人だから」


自分の事を誉められたかのように嬉しがる。


「あ、自己紹介の続きだったね。私の名前は名字名前。知っての通り白薔薇のつぼみよ」


名字、名前さま。
これが名前さまとの出会いだった。


「しーまこっ」


「きゃっ」
その声と共に襲いかかる背中への衝撃。
いつもされているのだが慣れない。いや、慣れるものなの?



そして白薔薇ファミリーを見て思ったこと、それは。『この姉あってこの妹あり』、そう思いました。
私もいずれああなってしまうのでしょうか。



……あれ?私なに考えていたのかしら。
あの方の妹になんかなれるはずがない。
私はいずれ去る日が来るかもしれないのだから―――。
私はキリストの学校に通っていながらも家はお寺。そのことがバレたら学校を辞める覚悟があった。




しかしそれもすぐにバレることとなる。



「しーまこっ」


「きゃっ」


いつもの様に後ろにくっついてくる名前さま。いつもならそこから他愛のない会話が始まるのだが今日は違った。




「志摩子の家って小偶寺だっけ?今度お守り買いに行っていい?」


私は背筋が凍り付いた。


「な、なんで……」
私の家がお寺と知っているの……?

「住所見ればわかるよ、それに。私よく行くんだな、お寺には、特に小偶寺にはさ」


「……うそ」


「やっぱ覚えてなかったんだ。名前は知らないのは仕方ないと思っていたんだけども」


「ご、ごめんなさい」


「謝らなくていいよ。……志摩子ってさ」


「はい?」


「この事がバレたら学校辞める気でいたでしょ?」


ドキンと心臓が跳ねた気がした。

「日に日に表情が沈んでいくからさ。最初は分からなかったけどさっきの寺の話して確信した。」


どれだけ名前さまは鋭いのだろう。


「志摩子さ、この学校に入学できた時点で家がお寺なのは問題ないってこと気がつかなかった?」



「…………あ」


確かにそうだ。
私はなんてバカなんだろう…

ホッと安心すると同時に涙が零れ落ちていく。



「ほら、泣かないの」

そう言いつつハンカチを差し出してくれる名前さま。



「あ、ありがとうございます」



―――――

―――

――




「落ち着いた?」

私が泣き止むまで私を抱き締めながら待っていてくれた名前さま。

「はい、ありがとうございます」

「いーえ。」



その言葉を最後に一旦会話が途切れる。


「「あの(さ……)」」



話すタイミングが見事に一致して話すタイミングを見失う。


「志摩子から言っていよ」


「いえ、名前さまから……」


「志摩子から」


「でも…」


「志摩子」


真っ直ぐ強く目を見られて私は押し負け、話は私からとなった。


「名前さま……妹を作られないのですか?」


「うん。候補が1人いるからさ。今日申し込もうと思って」


「…え」


先ほどひっこんだ涙がまた溢れそうになる。
まさか名前さまの話って……今までみたいに話せないって……言うの?


「ってことで志摩子。私の妹にならない?」


「…はい?」


いま信じられない言葉が聞こえた気がしたけどやっぱり気のせいなのかしら。


「いや、気のせいじゃないから」


「……本当に、私なんかで?」


「志摩子がいいの。」



私がいい、その言葉についに私は涙を我慢することが出来なくなり溢れでた。



「喜んで、妹にさせていただきます……っ」



「志摩子は泣き虫だなぁ。」


笑いながらそういう名前さまはまた抱き締めてくれた。
その腕の中はとても暖かく、頼もしかった。










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