「これで着付け完了よ、覚えられた?」

「はい、ありがとうございます…」

男である山崎が私の着付けを手伝うのは流石に駄目で、私はお雪さんという女中さんに着付けを手伝ってもらった。

お雪さんは、ショートカットで茶髪に黒のメッシュが入った,"今時"なお姉さんだった。私よりも数段綺麗……。

そして

「また何かこの世界について、男の人に聞けないようなことがあったら、なんでもあたしに聞いてね」


優しい。


「あ…ありがとうございます」

「どういたしまして…ふふふ」

「……?」

何笑ってるんだろう


「できましたか?」

襖の向こうから山崎の声が聞こえた。

「あ、うん!さ、行きましょ伶奈!」

「あ、はい」

襖を開けると、山崎がいた。


「うん!似合う似合う!かわいいよ」

「ど…どうも」

そんな普通の顔でサラッと言わないでよ山崎…。

「えっと、それじゃあ、とりあえずみんなが朝ご飯食べながら食堂で待ってるから自己紹介しに行こうか!」

「え、え、あ、はい」

「ありがとうお雪さん!」

「はーい♪またいつでも言ってね!」



食堂へ向かう途中。

「あ、そういえばお風呂なんだけど、男風呂に時間をずらして入ってもらえるかな?」

「あ、わかりました」

「あ…あと……」

「?」


「何て呼べば良いかな…?」


……は?何を?


怪訝顔の私に山崎は気付いたみたいで

「えと…だから、君のこと」

と訂正した。

…あー、そうゆうこと。

「私の方が年下なんで普通に呼び捨てで伶奈で良いですよ」

「あ、そう?……って、えぇ!?」

「は?」

みるみる赤面していく山崎。なんだなんだ

「おっ女の子を…下の名前で呼び捨て……!?」


……なんだ。山崎ってホントうぶなんだから

「なんなら本城で良いですけど」

「いや……伶奈、で」

私の名前を呼ぶと、山崎はさらに顔を真っ赤にした。

…なんかこっちまで照れるし!

「あ、ここが食堂だよ、さ、入って、…伶奈」

山崎がドアを開けてくれ、私を先に通してくれる。

私達が入っても、私達の存在に気付いた隊士は一人もいなかった。
…山崎の地味パワーだなこりゃ。


「ゴリラ…着替えてきました」

ゴリラの肩をトントンと叩いて呼びかけた。
「お、着替えてきたか!よーし皆注もーく!!」

……無視。

土方十四朗以外皆無視。

「皆注目ー!!」

無視。

「…おーい!注目ー!」

…無視。

「皆……注目…してよ…」

「…」

半泣きだこのゴリラ。若干キモい

「てめぇら聞いてんのかぁ!!!」

どーん

土方十四朗がバズーカを発射。

しーーーーーーん……


「切腹だお前ら全員」

「いや、そこまでしなくて良いよトシ」


ゴリラは泣き止んだ。土方十四朗は未だ怒っている。


「……………」

良い歳して元気な奴らだな


「えーとそれじゃあ皆に紹介します!」

ゴリラが大声を張り上げた


「今日から真撰組に配属されることになった……本城伶奈君だ!」

しーーーーーーーん……

一人の隊士が呟いた

「…お、女……?」

「「え?」」

ゴリラとハモった。ちょっとショック。

「大丈夫なんすか!?こんな女の子を隊士なんかにして!」

こんなってなんだよ


「大丈夫だ!伶奈君は剣道も免許皆伝してるし、何よりとらんぺっとも吹けるんだぞ!!」

半ば俺の父ちゃんなんかパイロットなんだぜ!みたいな口調で反論するゴリラ。


しかもトランペット関係ない。


「免許皆伝か……」
「すげぇな……」

ん?
なんかこれイケそう?
ていうかトランペットには触れないの?


「免許皆伝って事は俺と一緒ですねィ」

「え?」

そうなんだ……総悟も……


「すごいですね」

「一手しやしょうか」

「結構です」

まだ死にたくないもん


「ところで……」

山崎が口を開いた。

「とら、…ぺっと?って…何「トランペットです」

「うん、それ」

昨日、あっちの世界でトランペット吹いたから…今持ってるな

「今から取ってきましょうか?」

「えっ?」

…なんか土方十四朗が反応してるし。プププ。
よっぽどトランペットが気になるんだなあ…ちょっとカワイイかも。今の顔


「ちょっと待ってて下さい」

私はそう残し、大広間を後にした。

伶奈が大広間から出ていった後、一人の隊士が局長に質問した。

「あの、局長…」

「なんだ?」

「彼女…もしかして笑顔が……」

「………そのようだ」





「あ、ぎんたま20巻、持ってきてるじゃん」

持っていってあげよ

トランペットとぎんたま20巻を手に持ち、私は廊下に出た。


……ん?ちょいまて、
20巻て確か山崎の心の中が結構たくさん出てるよな……

土方十四朗がぎんたま20巻みたら結構とんでもないことになるんじゃないだろうか


「………やっぱ見せるのはやめとこ」

引き返そうとした時

「おい、大広間はこっちだぞ」


………………やばい

私は反射的にぎんたま20巻を背中に隠して土方十四朗と向き合う


「ひっ土方十四朗……なんでここに」

私がそう問うと土方十四朗は少々頬を赤らめながら


「ん、それがトランペットか?…あ、いや……来んの遅かったから…そ、それがトランペットか?」

と、トランペットをちらちら見ながら言う。


………どんだけトランペット早く聴きたいんだよ!

「………ん?背中のもんはなんだ?」


…しまった


「いやあのこれは」

「おっこれが噂のぎんたまか…表紙宇宙坊主じゃねーか」

「ちょ…!」

私の手からひょいととりあげ、パラパラと読み進めていく土方十四朗。



「………………」


ふいに土方十四朗の動きが固まった。

「………………」

「…………………」

「……………。」


「……………山崎ゃぁぁぁぁぁ!!!!」


…やっぱり…!!

「はいよ?ってぎゃぁぁぁぁ!!!」


どこからともなく颯爽に現れた山崎。そして訳もわからず山崎は土方十四朗から逃げ回った。


「てめぇなんで桂の潜入捜査失敗したこと黙ってたあああああああ!?」


…………それからかよ。


山崎、失敗したって正直に報告しなかったのかよ。ヘタレだなぁ

「ぎゃああああああああ!!!!!」



本日2回目の山崎の断末魔のような叫び(っていうかもう、断末魔)が朝の屯所に鳴り響いた。

「…………ほんっと元気な奴らだな」

つか、ぎんたまワールドで静かな場所なんてあるんだろうか?

………ないんだろうな


その後、気が済むまで鬼ごっこをした二人を引き連れて(土方十四朗からはぎんたま20巻を返してもらってから)大広間に帰ってきた。(遅いぞー、て散々言われた。)

そして、トランペットを演奏した。曲目は……あの、パズーが吹いた曲、あれ吹いてあげた。

「………すっげぇなお前!」

そう声を張り上げたのは


「ハゲ…」

「うん、違うから。スキンヘッドと言わせて」

「…原田隊長」

「そうそう」

ハゲはガハハハ、と明るく笑った。


ハゲってイメージよりもずっとずっと絡みやすいや。なんか陽気な人だな。

土方十四朗の目も、爛々と輝いてるや。プププ。瞳孔は開いてるけど。トランペットがそんなに嬉しかったのか。

ゴリラと山崎はニコニコと拍手をしてくれた(なんかあの二人似てるな)。

総悟は興味なさそうに、アイマスクをして最後列で寝てた。


その後、私はぎんたまを教えてあげた。と言っても、私のオタク話だけど……

「…にしても、ぎんたまってタイトル、すれすれすぎじゃないか?」

「土方さんアンタ朝っぱらからそんなん妄想してたのかィ…うっわ引くわ〜激しく殺してェ」

「うっせぇ総悟!」

土方十四朗と総悟のケンカが遠くで始まった。

「なぁ伶奈、そのぎんたまって漫画…誰が主人公なんだ?」

「あ、俺も気になる!」

数人の隊士がつめよってきた。

「えっと,銀さん…坂田銀と「「「「はぁ!!?」」」」」

は?

「俺とお妙さんのラブコメディーじゃなかったのか!?」

当たり前じゃん

「チッ真選組血風帳になってなかったのかィ…」

当たり前じゃん

「そうか旦那が…」

納得したように頷く山崎。あんたは主役とか狙ってないんだね。うんえらいよ

「あの天パ野郎ごときに主役を取られるとは…俺も堕ちたもんだぜ」

あらら落ち込んじゃってる

「あ、でもゴリラと土方十四朗と総悟は主要メンバーですよ」

励ましの意味でそう言った。言ってあげた。

「え…俺は?」

「ハゲに主要がくると思わないでください」

全く…これだからハゲは。

「……俺は?」

「……(ジミー…微妙だな…)…あ、お雪さんだ」

「話逸らした!」

私は遠くに見えるお雪のさんもとへと走って行く。


「お雪さーん」

「あ、伶奈!どう?真選組の皆と仲良くやってけそう?」

「わかんないけどがんばります」


遠目で伶奈とお雪の話している光景を眺めながら近藤が口を開く。

「早くなじめると良いな!伶奈くん!」

「そうですねィ」
総悟も続ける

「…………」
土方は黙ったまま。


そしてそれに山崎も続く。

「早くみたいですね…彼女の……笑顔」



「(…いい人ばっかりだ、本当に…)」



これからの毎日が楽しみです





…………………
なんか、ぎんたまキャラが、ぎんたまの存在を知らないっていう設定、無理ありますね(笑)





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