次の日。
「おはようございます…山崎ですけど…起きてます?」
「とっくの昔に起きてますけど。入ってくれても全然大丈夫ですよ」
頭の整理が大分できた私は、本来の性格が半分戻っていた。
「あ、失礼します…局長達がお呼びだよ」
「わかりました、今行きます。ありがとうございます」
「はーい」
山崎は相変わらずニコニコしていた。
「失礼します」
「おはよう!」
「おはようございます」
「…なんかえらい落ち着いてるな」
「まあ…」
こっちが本当の私だしね…。
昨日の方がどうかしてたんだ。
「それより、今から君のこれからの事を相談しようと思ってな!」
「私の…これから?」
「あぁ。俺らからしたら、異世界から来た君にはあまり、その情報を外に漏らしたくないんだ。だから昨日トシと話し合って…」
「あんたにはここに住み込みで働いてもらうことにした」
「…住み込み?働く?」
「あぁ。とりあえず今は女中として」
「え、女中?…嫌です」
「まじか!どうしようトシ」
正直、あんなふかふかな布団を仕上げるような仕事、私に出来る自信が全く無い。
「……お前、剣は出来るんだっけか?確か免許皆伝とか」
「はい、剣道ですけど」
「それじゃあ、隊士ってのもアリかもな。」
…え!?本当に!?
「いや待てトシ!!女の子だぞ!?血生臭い戦場になんてとても……!!俺は断固反対だっ!」
え、まさかゴリラに反対されるなんて…
「でも見てみろよこいつの態度。昨日みたくアホみたいに叫ぶやつなら話は別だが、ここまで冷静なんだから鍛えりゃ早い。」
アホみたいって……。
「でもなあ……。」
「大丈夫、責任は俺がとる」
なんか、土方十四朗、私の為にすんごい頑固になってくれてるな。
「うーん……。…伶奈さん、他に、特技ってある?」
「えーと、トランペット、が吹けます」
「「とらんぺっと?」」
え、まさか……
「無いんですか?この世界に」
「…トシ、聞いた事あるか?」
「いや……」
無いのか……
「あの、アレですよ?天空の城ラ●ュタで、パズーが日の出と共に吹くやつ…」
「…あぁ!!あれか!へぇ〜君の世界にはそんなもんもあるのか〜!いい世界だな!」
「…そうでもないですよ?」
「ん?そうなのか?あれっ…、てことは、君の言うトランペットってのは…要するに、楽器か?」
「そうですね」
「…よし、決めたぞトシ!本城伶奈君を隊士に認める!」
え?
「ほんとですか!?」
まさかトランペットで近藤さんに認めてもらえるなんて…!
「えらいあっさりだな近藤さん」
「俺、前々から真選組に音楽家が欲しいと思っていてな!」
「ルフィかお前は!…まぁ、良かったな」
「は…はい」
「よし、そうと決まれば早速隊士達に紹介するか!!」
「え、あ、はい」
「…ちょっと待て、そのまえに着替えなきゃいけねぇよな」
「あ……」
未だ制服だし…。
「山崎は何処行ったんだ?」
「あ……」
「ん?どうかしたか?」
「いや…なんでも無いです」
言ったら駄目だ
今、この部屋の外を山崎が通ったとか……
うん、絶対殴られるよ山崎。
なんか、ミントンラケット持ってたもん。
言わない方が良いよ、うん。
「山崎ならあっこでミントンしてますぜミントン」
「…総悟、言わないでよ………」
せっかく山崎庇ったのに…
なんで言っちゃうんだよいつの間にいたんだよアンタ
「!!山崎いいいいい!!」
副長は部屋を飛び出して……
「ぎゃぁぁぁぁぁ……!!」
山崎の叫び声が聞こえた。
ここって…
本当、思った以上に漫画通りだな
*
「…んで、あっちが厠で、その左隣りが風呂場だよ」
私は土方十四朗に殴られた山崎に、着物を借りに行くため山崎の部屋に行くついでに、屯所内をしてもらっている。
山崎の殴られた傷跡が痛々しい。
「風呂場って女風呂あるんですか?あとトイレも…」
「トイレ?」
「あ…厠です」
「厠は女中さんが使うからあるけど…風呂場は…」
………。
……私、どうなるんでしょうか
あ、山崎の部屋に着いたみたい。
山崎は部屋に入るなり、タンスをあさり始めた。
「えー、と……あ、これこれ!似合うと思うよ」
「ありがとうございます」
そう受け取った着物は……
お通ちゃんが一日局長の時に山崎が着ていた着物だった。
すげえ、興奮するぜコノヤロー。
「それじゃあ、俺、部屋からでとくから、着替えといてね」
「はーい……」
って……
ん……?
…あ……!
「や、山崎!」
私は思わず山崎の腕にしがみついた。
「ど、どうしたのっ?」
いきなりのことに山崎はかなり驚いた様子。
「き、着物の着方知らない…です…」
「あ……」