「捨て犬、」











この世界における私は、皆から影でそうよばれていた。



私の親は、私が幼い頃に私一人を残して行方不明になった最低な親だったから、
捨て犬と呼ばれても無理はないのかもしれない。

犬ではないんだけど。


とにかく、私は幼いながらに両親から捨てられたんだと解釈し、
そこからは、人と馴れ合うことがすっかり苦手になってしまった。


最初は孤児院に引き取られたけど、面倒を見てくれる大人が気持ち悪いくらいに優しくて、嫌気がさして、中学生の頃に逃げた。
孤児院の大人達は、少しだけ私を探して、

諦めた。


そこからは、幼いながらに一人暮らし。
親が家に置いて行った大量のお金を隠し持っていたので、
最低限の生活に支障は全く無かった。


事情を話せば、人情派を気取る大人達が、
中学生の私をかくまいながら、働かせてくれた。


そうやって自分の生活を自分で賄っていくうちに、
自然と両親から捨てられたという噂は広まり、「捨て犬」となっていたのだ。


まぁ、無理もない話なんだけど、
私にとって、その事はすごく、すごく嫌で。
私はナメられてるんだと、当時の私は勘違いし、
ナメられたくなくて、髪の毛を赤く染め、ピアスまでつけ…


ごくまれに捨て犬の私をおちょくりにくる馬鹿な奴は、殴って黙らせた。




そう、私はめちゃくちゃグレてしまった。


そんな不良の私を見ても、「捨て犬」という言葉は留まることをしらない。


もちろん、仲の良い友達がいる訳でもない。



私の居場所は無くなった。





―――そして、私の居場所がもうすぐ出来ることを、私は知らなかった。










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