「坂本辰馬?」
「…はい」
聞き逃しそうなくらい小さな声で、伶奈は返事をした。
「…どうして分かったんです?」
「…秘密」
「は?」
どうして秘密にしてしまったのかは、自分でも分からない。
秘密にしなかったら、伶奈はきっと喜ぶだろうに。しかも、俺の仕事も一つ完了するのに。
でも、ただ一つ、俺が言いたいのは
「…伶奈」
「はい?」
「伶奈は、俺が笑わせる」
それだけ。
その時、伶奈の気配が動いた気がした。
と思ったら、
ガラッ
「!」
襖が開いた。
「よろしくお願いします」
顔だけ出した伶奈の表情は、
「…ぷっ」
「なっ、なんで笑うんですか!」
「だって伶奈、超真顔だったんだもん」
すぐに、俺が笑わせる。
だから、坂本辰馬っていう単語で、笑顔になったりしないで。
『山崎!私、あの音のところに行きたいです!』
そう言ったときの君は、
すごく綺麗な笑顔だった。
――――――・
山崎が半分恋に堕ちている(笑)
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