「じゃあ、帰ろうか」

「え?あ、はい」

少し重い空気になってしまったかな…と思ったが、山崎はそう思って無かったみたいだ。

普通にニコリと笑って話しかけてきた。


「沖田隊長、もう怒ってないといいね」

「あー…」

忘れてた……




その時


ドガアアアアアア!!!


遠くの方で、何かが壊れる…墜落したような音が聞こえた。


「えっ…何!?何!?」

慌てる山崎を尻目に、私の脳裏によぎったことはただ一つ。



坂本辰馬の宇宙船…?



「山崎!私、あの音のところに行きたいです!」

「えっ……、…伶奈…?、」

私の呼び掛けに、山崎の反応は、イマイチ噛み合わない感じがした。

…けど、今はそんな場合じゃない!

「行きましょ!」

私は山崎の手首を掴んで走り出した。







午後8時

屯所。

音だけで方向に目星を付けるのはやはり難しくて、

山崎に真選組からの連絡が入るのを期待したが、それも無くて、

辰馬さんを見ることなく、屯所に帰ってきた。

「ハァー…」

分けてもらった一人部屋に、
私はうつむせに倒れこんだ。


辰馬さん、見たかったなあ…


「伶奈?」

襖の向こうから、山崎の声がした。

「山崎?どうしたんですか…」

「ん…直接話すほどのことでも無いから、襖、開けないままで話してもいいかな?」

「…?いいですけど…」

なんなんだ?

「もうひとつだけ、この世界のマンガのことで、聞きたいことがあって…」

「はあ…」

今さら聞くことなんかあるの?

「伶奈の、好きなキャラって誰だったの?」

「!」

それを聞かれるとは…

「え…えと、」

「俺の、予想、言ってもいいかな?」

「あ…はい…」

恥ずかしいな、なんか

なんか、恥ずかしい。





「…坂本辰馬?」





はい、その通りです。大当たり。


私は参ったように小さく呟く。

「……………はい」








…………………・
坂本辰馬でした。



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