「ババアアア!たくあん足りてないネ!もっとよこせコノヤロオオ!」

「うっさいわあ!本来ならそのたくあんはアタイの明日の朝ごはんなんだよ!」

「すみまっせーん、僕もご飯おかわりいいですかー」

「アンタもアンタだよ!ここは定食屋じゃねーんだよ!!」


「………」


…テンションすごいな。
若干ついていけない

「すみません山崎さん…、奢ってもらっちゃって」


「いやいや良いんだよ、どうせ俺らはタダ飯だったし。たくあんなら安上がりだから大丈夫だよ、どんどん食べて!」


「たくあん限定ですか」

「だからたくあんはアタイの朝ごはんだっつの!」


山崎、せっかくタダなのに。どんだけお人よしなんだこの人は。

「…アンタ、誰アルか」

「っえ、」


神楽ちゃんやめて、今気付きましたみたいな視線。

山崎よりも存在ないみたいじゃんか

「初めて見る顔ネ。ジミーとどういう関係アルか?」

私が座ってるイスの後ろに立ち、私の赤い髪の毛をぐいぐいと引っ張る神楽ちゃん。
痛いよ。

「…本城伶奈、真選組の新入り隊士。山崎とは上司部下の関係」

「!真選組隊士さんだったんですか!」

驚いたように新八くんはメガネをキラリ。

「…まあ、まだ隊服も仕事も、もらえてないけど」

「へえー」



…駄目だ。


新八くん達くらい年が近い人だと、

…思い出しちゃう。


陰でコソコソ悪口言ってたアイツらを。

「…………っ、」

いらいらしてきた。


駄目じゃん、神楽ちゃん達、関係無いのに。


落ち着くために目をつむった。


「伶奈アルな!」


…下の名前で呼ばないでよ、最終的には本城さんに戻るんでしょ


これはもちろん、神楽ちゃんに言う言葉じゃない。だけど。だけど。


「………っ、うっとうしい」

「!」

「ん?なんて言ったアルか?聞こえなかったアルよ」

ああ、いらいらする。

しつこく絡んでこないでよ。

大声で言ってやる


「うっと「伶奈!!」

…山崎だ…。
あれ、なんか、なんか

「…大丈夫だよ、江戸の皆は。優しい街だから」

「………。」


「ねえ、なんて言ったアルか?もう一度言うヨロシ」


大丈夫…。大丈夫、江戸の皆は


「…なんでも無いよ。」

「なんじゃそらヨ!気になるネ!」

「なんでも無いよ」

ああ…かわいいなあ、神楽ちゃんも、新八くんも。


そうだよ、この2人は、関係ないじゃん。

頭では分かってるんだよ、だから、大丈夫。



「僕、志村新八です。」

「私神楽アルヨ!」

「うん…うん…よろしくね」

「よろしくお願いします!」

「ヨロシクアル!」


山崎は、黙って、でも笑いながらその様子を眺めていた。

ああ、今この状況で笑ってないの、きっと私だけだな。

私的にはもう、笑ってるつもりなんだけどな。

「伶奈、この髪の毛どうなってるアルか?」

「ちょ、痛い痛い」

「どーなってるアルかー!?」

「痛い痛い痛い!まじ痛い!」

「神楽ちゃんん!何いじめっ子みたいなことしてんのオオ!」

「だって気になるアル!」

「普通に染めてるだけじゃんか!ですよね?伶奈さん」

「うんそうだよ。っていうか、私と新八くん多分同い年だから、タメ語でいいよ」

「え゛、同い年!?ずっと年上の人かと思ってまし…じゃなくて、思ってたよ」

「そっか」

「伶奈ー!!」

「痛い痛い」


…こんな風に、友達とじゃれあったりするの、初めてかも。


…友達?

「…ねえ、神楽ちゃん、新八くん」

神楽ちゃんが髪の毛離してくれないから、おかげで私の顔は逆さを向いて、景色も逆さけど、私は至って真剣だ。


「うん?」

「何アルか?」


勇気を持て。思い切って。言え


「私達…友、達…なの?」



言った。言っちゃった。

ああ、やっぱり言うんじゃなかった。

だって、二人、固まってる。


「何言ってるアルか?」


「!」


あーやっぱりそっか、人生、そんなに甘くないよねー…


「伶奈、そーゆーのは聞くもんじゃないアル!出会って名前交換したらみーんな友達ネ!」

「…え」

「そう!なんか改めて友達とか恥ずかしいから!」


…そっか、友達って、そんな感じなのか。


「ありがとう」


ふと、さっきお登勢さんに言われたことを思い出した。

“おいしいだとか、嬉しいだとか、小さな事、一つ一つに幸せを感じて生きな。”

嬉しい…。私、今、嬉しい。

やっぱり、これが幸せなのか。


お登勢さんの方を向くと、お登勢さんは、笑顔で頷いてくれた。

「…………。」

お登勢さんの笑顔に、今度は私は、すで顔を覚えていない母を重ねていた。


「伶奈ー」

「痛い痛い」

ああ、今なら、笑えてる気がするんだけどな。

山崎が何も言わないってことは、まだ笑えてないんだろうなあ。


でも、今日は幸せだ。




…………………・
ヒロイン、友達ゲットだぜ!←黙れ



×