「それじゃあ、どっか行きたいとこある?」
「お腹空きました」
「あ、それじゃあお団子屋さん行こっか!うん、おいしいもの食べたらきっと笑えるよ!」
「どうも」
山崎元気だなあ。
おいしいもの食べたら笑えるのか?グルメかよ。
「………?」
あれ、山崎立ち止まった。
何かを凝視している。
「?」
私も、山崎の視線の先へ目をやる。
「…!!」
「サッサトハキナコラァ!!ネタハモウアガッテンダヨ!!(さっさと吐きなこらぁ!!ネタはもう挙がってんだよ!!)」
「い、いやだからちゃんとお金払ったんだけど……」
「ナニヌカシテンダコラァ!!サッサトハケヤァ!!(何ぬかしてんだこらぁ!!さっさと吐けやぁ!!)」
うーわ。見るからにうざい。
うざい猫耳おばさんと、あれ、誰だっけ。ムーさんだっけ。
ムーさん、絡まれてるよ。
うん。これは見なかったことにしといた方がいいんじゃないかなうん。
「…山崎、あれは首つっこまない方が………」
「…いや、でもあれ、無銭飲食かも知れないし。」
「ああー…山崎、行かないでくださいー…」
って山崎、もう走ってるじゃん!
待ってよ山崎、私お腹減った!!
*
あれから数時間。
ムーさんは、ただキャサリンにインネンつけられてただけだった。
やっぱりね、私、ムーさんがそんなことするような人に見えないもん。
そして、場所は、お団子屋さんじゃなく、
……スナックお登勢。
「すまなかったねえ。キャサリンのせいでアンタらまで巻き込まれちまって。ある程度ならおごってやるから、食っていきな。」
「あ、ありがとうございます。」
山崎も、まさかこんなトコで食事をとるとは思わなかったようだ。
「…………」
「ア?ナンダヨオマエ!!アタシニナンカウラミデモアンノカヨ!!(あたしに何か恨みでもあんのかよ!!)」
「ええありますよまずはその読みづらい喋り方やめろ」
「ナンダヨコイツ!!オマエコソソノマッカッカナカミヤメロ!!(お前こそその真っ赤っ赤な髪やめろ!!)」
「あーもううぜえー!!私知ってんだぞ、アンタがキャラ作ってるってこと!!」
「ツクッテネーヨ!マジコロスゾ!!」
「なら私はまた豚バコにぶち込んでやろーかああ!!」
「落ち着いて伶奈。めずらしいね、伶奈がそんなに叫ぶなんて。やっぱりイラついてる?」
「今はイラついてます」
「そっか。まあ、とりあえず食べよ。せっかくタダなんだし。」
「はい…。」
「あと、まだ伶奈の独断で豚バコにぶち込む権力無いからね。俺にも無いし。」
「あ、すみません。」
適当に謝りながら、目の前にあるご飯に手を伸ばす。
おいしい。
お袋の味って、こんなのなのかな。イマイチ分かんないけど。
…なんでスナックでご飯たべてんだろ
「すみません、お手洗いお借りしていいですか?」
「ああ。奥にあるよ。」
「ありがとうございます。」
え、山崎、私を一人にしないでよ。
山崎はそんな私の心の声を無視し、トイレに駆け込んで行った。うんこかコノヤロー
「……………」
「マジデナンダヨアイツヨーアタシガホンキダシタラアンナヤツイッパツナノニヨー(まじで何だよあいつよーあたしが本気出したらあんな奴一発なのによー)」
「うるさいよキャサリン」
「…………」
「………」
「…………」
駄目だ、気まずい。
「……あんた」
「は、はい?」
いきなりお登勢さんに話し掛けられた。びびった。
「うまいかい?その料理」
「…?え、あ、はい…とても」
いきなり何聞くんだろ。おいしいに決まってる。
「…あんた…今まで苦労してだんだねえ。」
「え」
「一目見たときに分かったよ。今までほとんど幸せを感じたことなかっただろう?」
「……」
当たってる。少なくとも、前の世界には、幸せなんか、師範と2人でいる数十分しか感じなかった。
この世界に来て初めて、幸せを感じたんだ。まだ、それが幸せなのかどうかはあやふやなんだけど。
「まあ、あたしゃ詳しい事は知らないし、知ろうとも思わない。だがね、一つ言っとくよ。…こういう、おいしいだとか、嬉しいだとか、小さな事、一つ一つに幸せを感じて生きな。この歌舞伎町には、それが溢れてるさね」
「……師範」
「え?」
「ハ?」
……あ?
…何言ってんだ私
「…………?」
…なんにも知ろうとしないところ、師範と似てるかも。
「ありがとうございましたー、……って、え?何、何ですか?この空気」
「…山崎、」
「え?」
ガシャアアアン!!
「!?」
「え!?何!?何これ!!」
あれ、急に、ドア、壊れた。
ん?あの土煙の向こう側に見えるシルエットって……
「ババアアアア!!このっ!腹減ったネ!!メシ食わせろおおお!!」
「いやっ!だからっ、ちょっと頼み方考えようよ!!!」
「…はあー。またかい。お前ら。」
「………」
いや…なんつーか…もう…
神楽ちゃんと新八くんだよ。
「…わー。」
…………………・
主要メンバーついに登場\(^O^)/
あの人の名前、ムーさんで合ってたっけ。