私がトリップしてから数日がたった。


私はこんな性格なのに、どんどん親しげに話しかけてくる真選組の皆のおかげで、私は真選組にはだいぶ馴染めたと思う。

その日、真選組は最近は何の騒ぎも事件もないから、みんなゆっくりとしていた。

まあ、悪く言えば

「てめえら!!何サボってんだああ!!」

そう、皆サボっている。

「ひい!すんません副長お!」

皆ビビって仕事にとりかかり始めた。

私はそんな様子を縁側に座って眺めている。

「たまには大目に見てあげたらいいのに」

「一旦たるんだらなかなか治らねぇんだよ」

「そうですか」

まあ、まだ私は隊服も仕事も貰ってないから、ヒマなんだけど。

「そういや、近藤さんが呼んでたぞ」

「あ、わかりました」

私は立ち上がり、ありがとうございます、と土方十四朗に礼を言い、局長室へ向かう。

この数日で、真選組の屯所内は覚えた。

ゴリラ、何の用だろ

私は足早に歩いた。
(走るのはだるい)






「伶奈です」

俺の部屋の襖の向こうで伶奈の声がした。

「おう、入れ!」

「失礼します」

まあそこに座りなさい、と俺は促した。

伶奈が俺の前に座ると、俺は話し始めた。

「この数日、君の役職について考えてみたんだ!」

「あぁ…役職ですか」

「おう!」

伶奈は相変わらずニコリとも笑わないけど、口数は前よりかは増えたと思う。

…まあ、俺やトシのことを、変な呼び方をするのは変わらないんだけど


「それで、君には、副長助勤をやってもらいたいんだけど」


「…………副長助勤?」

「あぁ、そうだ。もともとは山崎が就いていたんだがなあ、あいつ、ちょっとサボり癖があるだろ?だから、あいつ副長助勤クビになって、今は空いてるんだ」

「副長助勤………」

伶奈は少し俯いた。

「ん?嫌か?嫌なら嫌って言っていいんだぞ?」

「…私、どっちかと言えば、漫画読んでた頃は、監察とか、隠密に興味があって…」

か…監察?隠密?

伶奈、監察をやりたいのか…?

「んー…でも、隠密捜査は、性格を変えることができないと……。それに伶奈ちゃん笑ってくれないしい…」

ていうか監察なんて女の子の伶奈には危ない。

できるだけ諦めてくれるよう、俺はやんわりと反対した。

ところが伶奈はキョトンとした顔で

「……え?私…笑ってない…?」

と、とんでもないことを言い出した。

え…?なに言っちゃってんの伶奈

もしかして…?

「私…今まで、何回かは笑ってたと思うんですけど……」

もしかして…!

「…………」

「…伶奈、笑って〜」

とりあえず試してみよう

「……」

一瞬伶奈が、何このゴリラみたいな顔でみたけど、すぐに真顔に戻った。

「…………」

「…………」

「…………」


「…伶奈、早く笑ってくれないと、お父さん顔の筋肉切れちゃいそう」

いつまで真顔でいるの。見つめ合っただけじゃん

「は?」

「え?」

「笑ってますけど」

「笑ってないよ」

「笑ってますけど」

「笑ってないよ」

俺は棚から鏡を取り出し、伶奈に向けた。

鏡を見た伶奈は、みるみるうちに目が大きくなっていく。

「何これえ」

伶奈の珍しく間の抜けた声が局長室に小さく響いた。


「…だろ?笑ってないだろ?」

「……はい」

伶奈はまだ少し驚いた顔で返事をした。

「…私、監察できないですか…?」

再び聞いてきた。

「うーん…」

やって欲しくないんだけどなあ……
でも、伶奈、どうしてもやりたそうだしなあ…

どうしたもんかなあ……


俺が悩んでいるとき、伶奈が口を開いた。

「あの」

「ん?」

「私…必ず笑います。だから、笑えたら、監察にしてくれませんか?」


……うーん……。まじでどうしよう……。



……ピカーン!ひらめいた!

「伶奈、お前が笑えたら "なんでも屋”になってくれないか!?」

「……なんでも屋?」

「ああ!!」

「…そんな役職、あるんですか?」

「今俺が作った!」

「…無い役職を私に押し付けないで下さい」

「いや、あるって!!その内ちゃんとした役職名にするから!だからそんなに睨むな!」

「…なんでも屋っていうのは一体なんですか」

伶奈は諦めたように聞いてきた。

「えっと、監察の仕事はもちろん、事務的な仕事とか、トシの助勤や総悟の斬り込み隊をやってもらったり、とにかく、 "なんでも”やってもらう役職!……どうかな?」

響きは雑用みたいだよね
まあ、監察って言う単語が出た時点で答えは決まってると思うけど

「…やってみたいです」

ほらね!

「……ま、笑えたら、の話だけどね。笑えなかったら、副長助勤だから!!頑張れ!」

「はい!」


…まあ、なんでも屋にしてたら、危険な時、1番安全な役職をさせたらいい、って言う、俺のたくらみなんだけど…(だから、伶奈が斬り込みをすることなんてまずない)(だって、危ないし!)

とりあえずは、伶奈を納得させたから、それで良い。





…私が真選組に入って初めての任務、
それは、


笑う。











∞ねくすとこんてにゅー

結局話は全く進まない(汗)
初、ヒロイン以外の視点!
過保護な近藤さん(^^)
てかヒロインわがままなだけ!!



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