屋上で、N君と二人ぼっち。
広い空は何もかも飲み込んでしまいそう。



「ボク、空が好きなんだ」



彼の呟いた言葉は私の耳に入る。
横を見れば彼は切なそうな顔で、空を見上げていた。



「ねぇ、なまえさん」

「何?」

「運命って信じる?」



目を見つめられながら言われてしまい、返答に困ってしまう。
その冗談みたいな言葉。
しかし、瞳には光が灯り、真剣さが伝わって来る。
…運命って、何さ。



「……信じ、ない」



乾いた声は屋上で響く。
そう、私は、信じない。
不確かな、ものなんて。
N君の瞳は切なそうに揺れた。
それを見て私の心臓はなり、ギュッとわし掴みされたよう。



「…そっか、ボクは、そう思ったんだけどな」

「…?何が、」

「出会いは一期一会、ボク、君に会えてよかった」



空に背を向けて、そのまま彼は屋上から出て行った。
その含みのある言葉。
それは私の心の中に靄をもたらした。
そして、すみついた。



「何なのよ…」



言葉は誰に聞かれることもなく風に乗り消えていく。
私には、きっと彼を理解し得ないのだろうと、心の中で小さな悟りが開いた。



一期一会の悟り
(意味深長、私には伝わらない)