一期一会、意味。
一生に1度だけ会うこと。
学校にいる限り、百回は会う私たちなのに、何故あんな事を言うのだろう。まるで直ぐに何処かへ行ってしまうみたい。

N君が転校して来て三日、一度も喋らなくなった。初日が嘘の様に、一言も。
別に、いいはずなんだ。だけど、何故か気になったりする。あれからというもの、彼の周りには女の子が絶えなかったり、授業には出なかったりと、派手になっていって、何だか遠く感じた。



「ねぇ、君はさ好きな人とか、いる?」



久しぶりに空いていない隣りの席を見て、はてな。
彼がどういう意図で言っているのかは分からないけど、一応答える。



「別に、いない。N君は?」

「ぼく?ぼくは、……」



意味も無くした質問に、彼は黙ってしまった。
そして数十秒の沈黙のあと、彼の口が開く。



「いるよ、うん、いる」



まるで、自分を納得させる様な口振りに疑問を感じながら、



「へぇ、誰?」



と、いう定番の疑問をぶつけた。
すると彼は、また少し考えた素振り。



「……今、喋ってる人」



また沈黙、私の頭は停止して、何も整理ができない。
頭で考えるより先に、体が動いた。



「せ、先生、お腹痛いので、保健室行ってきます」



席を立って、廊下に出ると、弾かれた様に私の足が動いて、熱くなった頬を風がかすめた。


読めない展開
(嘘つき、何なのよ)