事務室には、大きな薄型テレビがある。
聞いた話じゃ地デジも対応しているらしい。
そんな薄型テレビはお茶酌み係という、サブウェイ二人専門の仕事、すなわち二人がいなければいるかすらも分からない私には救世主なのだ。
二人とも仕事でいない時などは、とても助かるのである。


ある日の午後、二人ともバトルでいない。
クダリ様に振り回されない、それはそれは平和な午後だ。
事務室内の掃除も一段落し、ノボリ様に頼まれた仕事も終わっていた。
ソファに腰掛け、適当にチャンネルを回せば、最年少でチャンピオンに打ち勝ったという少年の特集で手が止まった。
私は、その少年を知っている、というか、見た事がある。
いつも、ギアステーションでウロウロしては首を傾げてトレインに乗るのだ。
お茶酌み係になってから見てないその彼が、そんなにスゴい人だとは思わなかった。
テレビから軽快な音楽が流れ、番組の終わりを告げている。
そのまま数分、止まっていると後ろからドアの開く音が聞こえた。
我にかえり、後ろを振り向けばやたらとテンションが高いクダリ様。楽しそうに笑い、興奮しているのか顔は紅潮している。
そして、一直線に私の所へきた。



「ねぇ!聞いて!」

「な、なんですか?」



少し近い顔、クダリ様の瞳は曇り一つなくキラキラ輝く。
私の問い掛けに、待ってましたと言わんばかりの表情で話し始めた。



「ぼくチャンピオンと戦った!ほら、最年少の!」



出て来た単語全てが先程聞いたもの。
彼は、チャンピオンの彼と戦って負けたそうだ。
負けたわりには、ニコニコ上機嫌だなぁと思いながら彼を見ていると、



「ぼくまた戦いたいなぁ!あ、そういえばなまえってバトル出来るの?」



話がいつの間にかバトルの話になっていた。
私は一応トレーナー、即ちバトルを出来る。
しかし、彼等サブウェイマスターというバトルのスペシャリストと違ってそこまで達者なものではない。



「出来ますけど……」

「え!本当!?戦お!」

「嫌です」



当然の決断。
勝てない勝負など御免被る。
しかし、相手はクダリ様だ。当然易々と引き下がる気はないだろう。



「ふーん、じゃ、いいや」



しかし、私の予想を大きく反し、クダリ様はあっさりと身を引く。
少々呆気に取られるが、都合がいいのは確かなのであまり深く考えないでおいた。
しかしそれが甘かったと後悔するのは後日の話。



バトル狂
(彼等にピッタリだ)