「最近、毎日貴女様のお顔を目にしている気がします」

「夏休みだからですよ」



わたくしとクダリが二人で暮らすこの我が家に、人が出入りする事はあまりない。出入りしていると言えば、彼女、なまえくらいだろう。
そんな彼女はここのところずっと我が家にいる。彼女は何かをする訳でもなく、本を読んだり、アイスを食べたり、とまるで自分の家にいるように振る舞う。
しかし、それにしても今日は少々無防備過ぎだと思う。タンクトップからのぞく下着のヒモが、冷ややかな主張をしていた。わたくしも一応男なので、目のやり場に困るというか、なんというか。



「熱いですー……」



近づいてきた彼女はわたくしのシャツを掴むと、体をわたくしにくっつけた。女性特有の柔らかい膨らみが、わたくしの胸に押し当てられ、手は意味も無く宙をかいた。
気恥ずかしいわたくしを知ってか知らずから、彼女が笑顔を見せながら呟いた。



「ノボリさん、冷たくて気持ちいー…」



わたくしの中で、何かが崩れた気がした。



夏の魔物
(それはわたくしを惑わせる)

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夏も終わりますねー…



20110911



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