「目、真っ赤。泣いたの?」
上から降ってきた言葉に反射的に私の頭は上に向いた。
写ったのは白色と、にんまりと笑った顔。
慌てて目をこすって、座っていたベンチから逃げようと動いた。
「あ、待って」
が、それは白色の彼により出来ないものとなった。
私には、好きな人がいた。とてもとても、大切で、大好きな人。
その人に思いを伝えたくて駅に来たのに、伝えられないまま、私の恋は終止符をうった。
そのまま、プラットホームのベンチに座って泣いていたら、白色の彼に声をかけられたのだ。
「なん、ですか、」
俯きながら、彼に問いかける。
こんな涙でグシャグシャになった顔を見ず知らずの人間に見せたくない。
しかし彼は、ただ私の腕を握ったままでなにも答えてくれなかった。
「あの、用がないなら、」
「はい」
言いかけた言葉を遮るように彼はなにかを差し出す。見れば、真っ白いハンカチだった。
なにもできない私を見かねて、彼は私にハンカチを握らせた。
「これ、あげる。目、こすったらだめだよ」
そのまま彼は、私に背を向けて人混みに消えていった。
ハンカチを手にしたまま、泣き止んだ私の目は彼の背中に釘付けになっていた。
火蓋を切ったら(恋が始まるわ)
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クダリは優しさと無邪気な心を兼ね備えてるに違いない。
20110329