「ノボリさん、一緒にお風呂入りません?」
手にしていたペンが手から滑り落ちた。
今、ニコニコと微笑む彼女の口からはとんでもない言葉と、手元に目をやれば、それに持って行くであろうタオルやらを持っている。
目の前の彼女を見ながらわたくしは言葉を失い、何も言えずに凝視した。
「…どうしたの?」
「それはこちらのセリフです。何をいきなり……」
キョトン、と首を傾げる彼女。
彼女とは、幼い頃から仲の良い数少ない女性の知り合い。言わば幼馴染みというやつだ。しかしながら、いくら幼馴染みでも成人を向えた男女が一緒に風呂というのは、何とも如何わしいというか、何と言うか。
「でも、タオル巻くし」
「そういう問題ではありません。わたくし達は何歳だと思っておられるのですか」
そう言えば、彼女は顎に手を当て何かを考えている様子。
何だろうと見つめていれば、ハッ、としたようにわたくしを見た。
「まさか、ノボリ。私の裸に欲情しちゃうとか!?」
「何故そうなるのです」
「分かった、分かってる。私は一人でお風呂入って来るよ」
何かを悟ったようなニヤニヤ顔に、少し呆れていると、風呂場に向っていた背中が振り向き、
「お風呂、覗かないでよね」
と言ってまた歩み始めた。言葉の出ないわたくしは、まさに絶句。
彼女には少々困ります。
困った彼女(冗談でしょう?)
----------------
セクハラ?
20110112