※死ネタ






葬儀が終わって、どのくらい時間が経っただろう。
遺体を目の前にやり場のない気持ちがあふれ、どうして、と声がこぼれた。
死は絶対なのだと、彼女を目の前に痛感する。
なまえが死んだ、昨日の夜、事故だそうだ。
目の前の遺体は、外傷はあまりなくきれいだとわたくしは思った。
まるで眠っている様な彼女にゆっくりと口付ければ、生前とは違い柔らかくも暖かくもない、冷たい唇が重なる。離れる唇に、白雪姫の様に目覚めないかと少々期待した、が、やはり目覚めずに、固く閉じられた瞼は開かなかった。



「ノボリ、いつまでそこにいるの?」



突然聞こえたクダリの声に、静かに振り向いた。
黒い喪服は彼にあまり似合わない。
いつもの笑顔ではない彼は、ゆったりとした視線をわたくしにぶつけた。感情の読み取れない瞳に、少々戸惑う。



「……もう少し、いさせてくださいまし」



呟けば、クダリは静かに廊下を戻って行った。
また、視線を彼女に向けた。
頭を過ぎるのは思い出、記憶、彼女とのことばかりで、笑う彼女、怒る彼女、照れる彼女、と、色々な彼女の表情が頭を流れ、流れる度に涙腺を壊していく。
流れる涙を拭う事なく、彼女を見続けた。
そして、最後頭に残ったのは泣いた彼女。泣きながら、わたくしの名前を呼び続けるんだ。
ポケットから出した小瓶、中の物を乱暴に口に入れた。
そして、彼女の横に横たわり、どんどん近付く眠気に逆らわずそのまま目を閉じた。
閉じれば簡単にわたくしの意識は遠のいた。








「……ボリ、……ノボリ、」



聞こえた懐かしい声に目が覚めた。
体を起こせば、白い服を来た彼女がわたくしの横に立っていた。
あぁ、夢か。と、少々目を細める。



「ノボリ、なんで?」



問い掛けの意味が分からず、何故、とは、と聞き返すと、彼女は今にも泣きそうな顔でわたくしを見下した。



「なんで、こんなことしようとしたの?」



こんな事。
それはきっとさっきの睡眠薬の事だろう。
何も言えずに、畳に目をうつした。



「ノボリは、死なないで」



反射的に見つめた顔は、泣きそうながらも意思の強いまなざしがわたくしをい抜き、捕え離さない。
わたくしも、負けじと彼女の目を見つめ胸にたまったそれを吐き出した。



「わたくしは!貴女様のいない未来等には興味ありません!どんな!どんな、形でもいい。貴女様と一緒に……、!」



途切れる言葉、流れる彼女の涙を見つめる。
あぁ、どうして、どうして。
貴女様はおいて行くのですか。



「ゴメン、行くね、大好きだよ」



消えていく恋人、掴んだはずの手もそのまま触れないできえた。
プツン。
そこでわたくしは現実に引き戻された。
周りは薄暗く、かなりの時間が立った事を告げていた。
柩を見れば、動かなくて冷たい彼女。その手をとりながら、子供みたいに大声で泣いた。



美しかった世界
(貴女様がいなければ、全て色褪せたものなのです)

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切ないっぽく
後味の悪い感じの話になってしまった



20100117



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