※痛い
焼ける様に熱い左目、押さえても熱さは一向におさまらない。
そんな中、糸を切った様に零れた涙は、熱い瞳にしみて痛かった。
痛くて、痛くて、涙は止まらず、目を押さえる手に力がこもる。
視界の上に入る、白い何か。それを腕だと気付いた時にはもう遅くて、掴まれて頭は壁にあたり鈍い痛みをもたらした。
唯一開く右目は涙で視界が悪く、彼の表情が確認出来ない。霞んだ彼の口元が動く。
「ねぇ、なんで泣くの」
「ゴメンなさ、……」
「なんで謝るの?あぁ、謝る様な事したんだ」
「違ッ…!」
伸びる腕、それは首をしっかり捕らえ私には何も言わせないかの様に力が加わっていく。
慣れない苦しさ、圧迫感は頭をあっという間に白くした。
先ほどよりも流れる涙は、クダリの手にもかかった。
「ねぇ、苦しい?じゃ、本当の事言ってよ」
違う、と口が動くだけで声は出ない。
白く視界がかすみ始めた頃、手はやっと離れ噎せた様に咳が出た。酸素が追いつかず、視界がチカチカとまだ白い。霞んだ視界、彼は口元だけ歪めて目が笑っていない。
ゾッと背筋が凍った。
「ばれる嘘つかないで?ぼく、分かるんだよ。なまえ、ノボリと浮気してる」
違う、と動きかけた口を無理やり閉じた。今、彼には否定も肯定通じない。きっと何を言っても、手が出てくる。
何もいわない私を見て彼は、眉をよせて眉間に深い深いしわを作り私を睨む。振りかざす手、防衛本能なのか頭を覆った。
しかし、くるはずの衝撃は何もない。恐る恐る彼を見れば、泣きそうな顔で私を見下している。
下げられた腕は服を掴み震えていた。
「あ、……なん、で、ぼく、なまえ怯えさせて、」
零れる涙は床にポツポツ落ちていき、カーペットに染み込んで行く。
どうして、という彼の言葉に私も涙が零れて。
どうして、
それは二人とも知らない事で、ずっと分からないものだった。
左様なら(僕らの愛はどこへいったんだろう)
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DVクダリ?
難しい…
20110104