静かな夜でした。
何もかもを包む夜の黒は、とても心地よく安心で来ました。
しかし、私の心はひどくすさんでいて、なんと言うか、感傷的なのです。
それもこれも、彼女を嫌いだと言えばすべてが丸く収まるのでございます。
しかしながらわたくしの心はきっと、まだまだ感傷は止まらず彼女を求めるでしょう。
こうも欲望に忠実に従う事など、前のわたくしなら考えもつかないでしょうね。

彼女は静かに眠っており、静かな静かな寝息しか聞こえませんでした。
あぁ、薬が多過ぎましたね。
少々、後悔致しました。
しかし、こうまじまじと顔を見る機会などありません。
この、彼女の目が覚めるまでの時間さえ、喜びに変わりました。
彼女は、わたくしの女神でございます。
一目見た時から直感で分かりました。
しかし、そんな女神を狙う虫けら供が沢山いる事を、わたくしは気付いてしまったのです。
あぁ、彼女を慈しむのはわたくしで十分なのでございます。
たとえ、彼女に想い人がいたとしても、直ぐに忘れるでしょう。
彼女は直にわたくししか考えられなくなる、それは決まった事なのでございます。
壊れ物を触るかのように彼女に触れれば、ピクリと少しだけ反応を見せました。
そして、ゆっくり持ち上がる瞼、わたくしの姿をとらえるとそれは直ぐに大きく見開かれ、恐怖や怯えの色が濃くなって行きます。
にわかに震えだす身体、瞳は今にも涙が零れ落ちそうでした。



「あ、貴方、誰、」



ガタガタと震え、言葉さえもままならない彼女を安心させるため、触れようとすれば、彼女の身体はより一層震え、過剰に反応いたします。
それはまるでわたくしを拒絶する様。



「なまえ様、どうしたのですか、」

「い、いや、!触らないで、…!」



それでも構わず触れれば、パシン、と手は乾いた音を立てながら落ちて行きます。
あぁ、どうして、わたくしを拒むのですか、?
わたくしは、貴女を、貴女を。



「嫌だ、出して、ここから出して、!家に、帰りたい、!」



震える体で、彼女は玄関へとかけて行きます。
あぁ、出れるわけないのに。
ドンドン、ガチャガチャ、と彼女が足掻く音が耳にははっきりと入りました。
けれど、わたくしが折角捕まえた女神を、みすみす逃がすわけがないでしょう。
ゆっくりと、近付けば、彼女は悪足掻きをやめ、涙をボロボロと流した瞳でわたくしをみあげました。
あぁ、怯える貴方様は、より一層、
美しい。



君が悪いんだ
(どうして、わたくしじゃないのですか)

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好き過ぎて監禁したノボリ
Thanks確かに恋だった様



20101227



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