ぐるぐる回る、頭は働かない。
あぁ、何、してたっけ?
足下もグラグラ、倒れそう。
頭が、痛い。
「………!!」
あぁ、誰だろう。
何か叫んでいる、ぼやけた黒いもの。
そのまま、瞼を閉じれば簡単に意識はどこかへ飛んでいった。
―――――――………
目を開けば、眩しい電気の光が私の眼球を刺激した。
ボーと見つめた光がいきなり隠れ、黒い影。
あぁ、何だろうと見上げればそこには無表情な、黒い人。
「目が覚めましたか、お客様。大丈夫でございましょうか」
機械的な声が鼓膜を震わせる。
体を起こせば、ズキンと頭に鈍い痛みが走った。
「まだ動かない方がいいです」
「、すみません、」
起こした体をすぐ戻し、さっきと同じ体勢にした。
周りを見ると、何処かの事務室のような場所。
何故私はここにいるのだろうか。
そんな疑問は直ぐに解決した。
「貴方様はシングルトレイン乗車中にわたくしの目の前で倒れたのでございます」
言った彼を見る。
あぁ、そうだ。
私はバトルサブウェイに挑戦したんだ。
よく考えたら、私、乗り物酔いがひどいんだった……。
しかし、それは薬を飲めば楽になるはず。
寝たまま鞄をあさり、薬を探した。
しかし、それらしきものはない。
ガクンと気持ちがおっこちる。
「どうしました、?」
「いえ…あ、すみません、迷惑かけて。ありがとうございます」
鞄を横に置き、天井を見つめた。
今日は、調子がよかったんだ。
いつもなら勝てない18戦目も勝てて、絶好調と思った矢先、グラグラと頭が回って、気持ち悪くなって、あぁ、21戦目、サブウェイマスターと思った瞬間、プツリと意識が途絶えて、今に至って、……。
「どうぞ、お水です」
テーブルに置かれたおいしい水。
身体を起こしてそれを手に取り、お礼を言う。
黒い車掌さんは私の向かいに座った。
「本当、すみません」
「いえ、稀にあることなので」
会話は無くなり、沈黙が部屋を包んだ。
あぁ、帰らないと、けれど、バトルはどうなるのだろう。
折角、勝ち進んだのに。
しかし、倒れた挙げ句仕事まで中断させている私がそんな我が儘を言う資格はない。
また、勝ち進めばいいのだから、ここは大人しく帰る事にした。
「…では、私は失礼します、」
「あぁ、待ってください」
立ち上がった瞬間、制止を求められ立ち止まった。
彼に目を向ければ、無表情な何を考えているか分からない顔が目に入り、その、への字の口が動き出す。
「折角ですから、一戦交わりませんか」
「え、いいんですか、?」
「はい」
黒い車掌さん。
彼の顔からは想像出来ない優しい言葉は、私の頭痛を溶かしていった。
ハロー、メルトダウン(溶ける、私の心)
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優しい彼に落ちます
勿論恋的な意味で
20101227